野村総合研究所(NRI)の市場規模予測では、M2M/IoT市場は年率12~18%で成長を続け、2014年度の約3300億円から、2021年度には9000億円を超える規模に達するとしている。
分野別の市場規模(図表)を見ると、直近の2016~2017年はエネルギー分野が大きく伸び、その後、工場設備・産業機器やセキュリティその他の分野の成長が加速すると見ているようだ。
図表 M2M市場(分野別) |
NRI 上級コンサルタントの木下貴史氏は、高い成長率の要因として、スマートデバイスによる人員・モノの情報武装化、ネットワークの高速化、データ分析技術の発展によって、より多くの企業が恩恵を受けられる可能性が高まってきたことを挙げる。ここで重要なのが、「モノ」だけでなく「人」にもフォーカスが当たっていることだ。
「あくまで『モノのインターネット』ということではなく、モノの向こう側にいる人間も重要」と木下氏は指摘する。
NRI 上級コンサルタントの木下貴史氏 |
優先課題は「人をつなげる」IoTでは「Things」、つまり機械や設備等からデータを収集することにフォーカスが当たるが、そのデータを人が活用してこそ価値がある。また、人に関するデータもIoTの重要な要素だ。
したがって、IoTで新たな価値を生み出すには、「人」を今以上にネットワークにつなげ、かつデータを自然と活用できるようなプロセスもあわせて考える必要があると指摘するのは、シスコシステムズでシスココンサルティングサービス・シニアパートナーを務める八子知礼氏だ。「データを活用するプロセスを自動化し、さらにプロセスの上で振る舞う人ももっとつなげてあげる必要がある」という。
シスコシステムズ シスココンサルティングサービス・シニアパートナーの八子知礼氏 |
八子氏が手掛ける案件でも、人を起点とした発想でIoTを活用しようとする取り組みが増えているという。例えば、外国人観光客の行動把握にIoTを使い「気持よく観光してもらいながら『爆買い』を誘発したいといった相談が多い」という。
また、人手不足が深刻化する建築・工事現場において、作業員の管理や配分の効率化、熟練工の技術継承にIoTを使おうというケースも増えている。いずれも、人の動きを可視化・分析し、そのデータを活用する業務プロセスも合わせて変革していくような取り組みになる。八子氏は、「モノではなく人をメインに着想していくと効果が明確で投資しやすくなる」と話す。この点こそ、IoTを活用したビジネスで先駆ける鍵となりそうだ。
これに加えて、市場の発展にはデータ分析技術の進化も欠かせない。NRIの木下氏が強調するのが「少ないデータからでも情報を十分に把握できる分析技術」の必要性だ。この観点では、人工知能の重要性が増すと考えられる。さらに、政策面でM2M/IoTが社会基盤として位置付けられ整備される動きが加速すれば、冒頭に示した予測以上の成長も期待できるとしている。