データ収集がIoTの目的ではないネットにつながるデバイスの爆発的な増加によって、IoTへの注目と期待もますます高まっている。しかし、具体的にビジネスにどう生かしていくかが悩ましい課題でもある。
日本アイ・ビー・エム アナリティクス事業部 テクニカル・リード 土屋 敦氏 |
土屋氏は、IoTに取り組む際の基本的な注意点として、「目的と手段を混同してはいけない」と説いた。すなわち、IoTの目的はデータの収集ではなく、集めたデータを価値ある情報に変換して有効活用することであり、ここを履き違えると、データを集めても“何をするのか”“どういうサービスに生かすのか”で足踏みしてしまう恐れがあるということ。さらに、「収集したデータから価値を得るためには『データの収集→処理・分析→アクション』という流れを循環させることが重要」と強調した。(図表1)
図表1 「データの収集→処理・分析→アクション」の循環でIoTの価値を高められる |
「IBM Bluemix」でアイデアを容易に実践IoTに取り組むのははたして容易なのか――。「ハードルは決して高くない」と述べた土屋氏は、コストをかけることなくアイデアをすぐにトライアルへと移すことができる仕組みとして、IBMが提供するクラウドベースのアプリ開発・実行プラットフォームサービス「IBM Bluemix」と、これに包含されるIoT向けのアプリ開発ツール「IBM IoT Foundation」について解説した。(図表2)
図表2 IoTへの容易な取り組みを実現する「IBM Bluemix」と「IBM IoT Foundation」 |
これらは「一般のビジネス部門に所属する人でもアプリを作れるようにするのが狙い」という。実際、「Node-RED」というフロー形式のエディタツールを用いて、あらかじめ用意されている機能モジュールのアイコンから必要なものをドラッグ&ドロップして結んでいくだけでアプリを開発できる。プログラミングは一切不要だ。(図表3)
図表3 「Node-RED」を使えばプログラミングなしにIoTアプリを開発できる |
センサーデバイスは一般の市販品でも対応可能。デバイス側からクラウドへのデータ送信も、Bluemixで提供されている「レシピ」と呼ぶサンプルプログラムを使って簡単に実現できる。収集したデータはAPIを介して可視化や分析が行える。(図表4)
図表4 「IBM Bluemix」を使ったIoTアプリ利用のフロー |
また、クラウド上で開発したアプリは社内の専有サーバに移行することもでき、パブリック/プライベートのハイブリット環境で運用も可能だという。
土屋氏は、Bluemixがいかに簡単に利用できるかを示すべく、自身のiPhoneを使って壇上でデモを実施。iPhoneのセンサー機能(振動検知)が感知したデータをクラウド上にリアルタイムに収集・グラフ化する様子を聴講者に見せ、「これを工場の製造ラインに当てはめれば、振動センサーからの検知データにより異常を通知する仕組みを簡単に構築できる。さらに、機械の故障を予測して資産管理システムにメンテナンス指示を出すといったシステムも実現されている」と付け加えた。(図表5)
図表5 土屋氏がiPhoneを使って行ったデモの概要 |