――リーマンショック以降、急成長を続けてきた移動通信市場に陰りが見えてきた印象があります。今後、市場はどう動いていくと考えていますか。
アラタロ 市場はまだまだ伸びると思います。ご存じの通り世界の携帯電話加入者はすでに45億を超えていますが、新興国を中心に依然拡大が続いています。
もう1つ、日本など多くの国で成長が期待されている分野がモバイルブロードバンドです。HSPAをはじめとする世界のモバイルブロードバンドのユーザーはすでに4億5000万~5億に及んでいます。2015年にはおよそ35億になるでしょう。その理由の1つに、モバイルブロードバンドが健全な、儲かるビジネスになってきていることが挙げられます。
――「儲かるビジネス」とは、どういうことですか。
アラタロ 最近まで多くの通信事業者が、モバイルブロードバンドに多額の投資をしても、それに見合う収入を得るのは難しいと考えていました。この意識が変わってきているのです。
例えば当社の最新のソリューションを前提に、事業者がモバイルブロードバンドサービスを提供するために必要なコストを試算したところ、ブロードバンドユーザーの1カ月の一般的なデータ通信量である1GBをサポートするのに必要なコストは、平均1ユーロ(1.2ドル)ほどで済むという結果が出ました。
国や事業者によっても違いますが、モバイルブロードバンドサービスの1ユーザー当たりの料金は月額20~40ユーロ、平均で約30ユーロです。1ユーロの支出でこれだけの収入が得られるとしたら、かなりいいビジネスだと思いませんか。多くの事業者が、このことに気付き始めているのです。
――1GB当たり1ユーロという数字はかなり低いですね。何がこれを可能にしているのでしょう。
アラタロ この数字は基本的には事業者がW-CDMAをHSPAにグレードアップするために必要な設備投資(CAPEX)に、伝送コストやオペレーションなどのランニングコスト(OPEX)を加えたトータルコストから算出したものです。
近年、同じコストでより多くのトラフィックに対処したいという要望が、IPネットワーク機器や無線ネットワーク機器に対して強く寄せられており、当社もコストパフォーマンスの優れる製品でお客様のニーズに応えてきました。これがコストが下がった大きな要因です。
加えて、競争の厳しい欧州市場を中心に、コストを抑えるための新しいビジネスモデルが登場してきたことも挙げられます。例えば複数の事業者で伝送設備や無線設備を共用するといった手法です。
ベンダーがネットワークを構築して運用まで受託するというアウトソーシングも広がってきました。このような枠組みを採用することで、事業者はCAPEXやOPEXを大幅に低減できるのです。エリクソンではこうした「サービス分野」の売上が全体の4割を占めるまでになっています。