――プロセラネットワークスはどういう会社なのですか。
菅野 2002年に創業した米国の会社で、本社はカリフォルニア州のフリーモントという街にあります。当初はネットワークスイッチを手掛けていましたが、2006年にスウェーデンのDPI(Deep Packet Inspection)ベンダーを買収し、これを機にトラフィックを可視化、制御する事業に移りました。2013年にはカナダのベンダーも買収し、スウェーデンとカナダで研究開発を進めています。
ビジネスの中心となっているのが通信事業者向けの「PacketLogic」という製品で、世界の多くのお客様にご利用いただいています。
――PacketLogicはどのようなソリューションなのですか。
菅野 PacketLogicは、ネットワークを流れるトラフィックを解析し、さらにこれを加入者情報など、ネットワーク上の様々なデータと組み合わせて、可視化やトラフィックの制御を実現するものです。これによってネットワークコストの削減やユーザー体感の改善、新しい料金プランやサービスを実現することができるのです。
――具体的にはどんな製品になるのですか。
菅野 PacketLogicは、3つのアプライアンス製品として提供しています。
1つがトラフィックを解析する機能と、トラフィックの制御などを行うPCEFの機能を持つPRE(PacketLogic Realtime Enforcement)です。PCEFはPCRF(ポリシー制御モジュール)のポリシーを実行するものですが、PREはPCRFがなくてもネットワークの混雑や品質、アプリケーションなどを自ら検知して円滑な通信ができるよう制御できます。
もう1つが、PREで得られた情報を加入者情報とマッピングしたり、BSS/OSS、PCRFなどとの連携により高度な処理を可能にするPSM(PacketLogic Subscriber Manager)。最後がこれらの情報を様々な形で可視化したり解析レポートを提供したりする PIC(PacketLogic Intelligence Center)です。
PREは単体で導入することもできるのですが、多くのお客様はこの3つをセットで導入されています。(図表1)
図表1 モバイルネットワークへの適用例 |
ビデオの体感品質向上にも
――どういった用途で使われるのですか。
菅野 PacketLogicはあくまでプラットフォームで、お客様のニーズによっていろいろな使い方ができます。例えばPacketLogicの「Insights」という可視化ツールを使うと、ユーザーの利用状況を料金プランやアプリケーション、端末/基地局毎など様々な括りで可視化してWeb上で見ることが可能です。
これによって、例えば加入者の20%が加入している料金プランのユーザーが全体の40%のトラフィックを発生させている、またどの様なアプリケーションをいつどのくらい使用しているのか、といったことが一目で分かりますから、これらをサービス開発やマーケティングに活かすことができます。コールセンターに導入すればそのユーザーが直近の一週間にどんな通信を行い、今どこにいて、通信品質はどうなのかということが分かるので効率的な対応が可能になり、顧客満足度だけでなく、コスト削減にもつながります。
またPacketLogicを用いることでトラフィックを最適かつ公平に制御したり、年少者を対象に有害コンテンツを遮断するペアレンタルコントロールなどの機能も容易に実現することが可能です。
PacketLogicを使って新しい料金プランやサービスを実現するケースもでてきています。
――どのような料金プランが実現できるのでしょうか。
菅野 海外では、特定のサイトにアクセスする際に画面に広告表示がされる代わりに通信料金を無料にするサービスを実現したケースがあります。同様の仕組みを使って特定のショッピングサイトで買い物をしている間はパケット料金がかからない、逆にコンテンツをパケット単位で課金するというモデルも可能なのではないでしょうか。
PacketLogicを活用することで、アプリケーションや曜日、時間帯、ロケーションなどに応じた多様なプランが容易に実現できるのです。
――使い方は通信事業者のアイディア次第だと。
菅野 そうです。同時に当社では最近のトラフィック動向にあわせたソリューションを展開しています。最近ではビデオが非常に多くのトラフィックを生み出しており、通信事業者のビデオコンテンツやYou Tubeなどに加え、米国のNetflix社が今秋に日本でサービスを展開する予定など、更に増加していく傾向にあります。
通信事業者ではこのビデオの体感品質がユーザー体感の重要な指標になり、当社ではビデオトラフィックの可視化ソリューション「Video Perspectives」をリリースしました。ビデオの品質をセッション毎に見ることができるもので、ネットワークから得られる情報だけでなく、画面サイズや解像度などの端末側の情報も取得して独自のアルゴリズムで処理することで個々のユーザーが実際に体感している映像品質を算出し、5段階にランク付けして表示します。
このソリューションで好評を得ているのが、単にランク付けするだけでなく、低ランクの項目をクリックすると何が問題なのかをドリルダウンして原因を特定できることです。いち早く手を打って顧客満足度を高められる。映像関連のトラフィックが急増する中、これは通信事業者の大きな差別化ポイントになるはずです。
こうしたトラフィック可視化の高度化により、通信事業者の多くの施策を実現します。(図表2)
図表2 トラフィック可視化を高度化する事によるメリット |