<連載>AI運用のリアルLINEヤフー流AIOps アラート一次対応は自動化、障害調査にも適用

LINEヤフーは、ネットワーク運用にAIエージェントを導入し、アラートの一次対応や復旧時の確認作業を自動化している。構成を熟知したエンジニア自らが、NOC前提からAI前提の運用への転換を進めている。

AIOpsの前提はデータ整備

AIエージェントを動かすうえで、もう1つ不可欠な前提が「データ整備」だ。AIに判断させるには、ネットワークの状態や構成情報が、システムから参照できる形で整理されていなければならない。

LINEヤフーでは、インベントリ管理システムやGitのような管理システムへの情報集約を徹底している。Closネットワークのように規則性のある構成では、経験豊富なエンジニアなら「このポートは、おそらくここにつながっているはずだ」と脳内で推測できる。しかし、AIにとってはその情報は存在しないことになる。AIに任せるには、こうした暗黙知をデータとして扱える形に変える必要がある。チケット履歴をたどらなければ分からないような構成情報も、情報の所在と形式をそろえ、AIがアクセスできるように整備を進めている。

このようなデータ整備の地道な取り組みがあってこそ、AIツールは活用でき、AIの判断を現場のプロセスに戻すことができる。一連のサイクルを、ネットワークを熟知したエンジニア自身が担っていることが、同社の取り組みのエッセンスと言えるだろう。

NWエンジニアの将来像

AI自動化の先に、ネットワーク運用はどう変わるのか。岡田氏は「AIがエンジニアを全面的に置き換える未来は、少なくとも現時点では見えていない」と語る。AIが担うのは、強いストレスがかかるアラート確認や定型作業であり、人間はより複雑な設計や改善活動に時間を使えるようになる。

求められるスキルも変わる。「今後はプログラミングができないネットワークエンジニアは厳しくなるのではないか」と岡田氏は指摘する。AIエージェントを運用に組み込むには、自動化ツールやデータ連携の仕組みを理解し、自ら作り替える力が求められる。必要になるのは、ネットワーク全体を理解するドメイン知識、AIに適切な指示を出す力、必要なデータへアクセスできるようにする設計力、出力の妥当性を評価する力だ。

LINEヤフーの取り組みは、人間の「経験と勘」に支えられてきた運用ナレッジをAIが扱える形に変え、日々の運用に組み込む実践だ。AIOpsは単なる自動化ではなく、ネットワーク運用そのものをAI前提にアップデートするチャレンジでもある。

月刊テレコミュニケーション 2026年8月号の記事を再構成]

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。