「AIが複製しにくいもの」が競争力になる
フィジカルAIの活躍が期待される製造や物流、医療・介護といった現場は、それぞれ異なるルールやノウハウで動いており、場面ごとに判断も異なる。
そのため、ChatGPTやGeminiのような「汎用AIではなく、特定の業界や用途、現場に特化した『領域特化型AI』との相性がよい」と小幡氏。現場を映すカメラ映像や設備ログ、業務ログ、熟練技術者の知識・ノウハウといった企業独自の現場データを、いかに学習に活用できるかが、フィジカルAI実装の精度向上と差別化につながると説明した。
特に強調したのは、企業の競争力の源泉が移り変わりつつあるという点だ。「AIがコードやソフトウェア、コンテンツを生成できるようになると、情報だけで完結するものはコピーされやすくなる。そこで重要になるのが、リアルとの結節点だ。人との信頼や現場、設備、規制、業務フロー、コミュニティといったAIが複製しにくいものが競争力になる」

AIに複製されにくいものが競争力になる
フィジカルAI実装は「4ステップ」で
小幡氏はさらに、フィジカルAIの実装ステップについても述べた。いきなり高価なロボットの導入から始める必要はなく、次のようなステップを踏む段階的な高度化を提案する。

フィジカルAI導入の4段階
第1ステップは「通知」だ。センサーやカメラ映像でAIが不審者の侵入や機器の異常を検知して管理者に通報する。「そうした小さな取り組みも、AIを画面の外、現場につなげるという意味で立派なフィジカルAIだ」(同氏)
次は「システム制御」。検知したデータに基づいてITシステムを自動で動かす。第3ステップは、設備の自動制御だ。例えば、温度異常を検知したら、AIの判断で空調を制御する。このように、現実世界へのAIの関与を深めたうえで、最終段階でロボットを自律制御する本格的なフィジカルAIを目指す。
企業が今から意識すべきこと
そのうえで、小幡氏は最後に「企業が今から意識すべきこと」として次の5つを挙げた。

小幡氏が挙げた「企業が今から意識すべきこと」
まず、人がやるべき仕事とAIに任せる仕事を整理する「業務の棚卸し」を実行。「現場データを集める」ことに加えて、AIに学習させることを前提に、熟練者の判断や経験といった「暗黙知を見える化する」。
先に述べた通り、AIの導入・活用は「小さく始める」ことが肝要であり、さらに、その設計・導入にあたっては「運用リスクまで考える」ことが重要と指摘した。具体的には、安全性や誤作動が起きたときの責任範囲、継続運用のリスクまで考えることが不可欠と強調した。
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