――家電や自動車といったモノに通信機能を持たせ、インターネットに接続することで新たな価値を生み出す「Internet of Things(IoT)」が注目を集めています。シスコでは「Internet of Everything(IoE)」を提唱していますが、両者はどう違うのですか。
平井 IoTはM2Mやセンサ技術など、モノとモノがつながり情報を収集する段階にとどまっています。これに対し、IoEはモノだけでなく、すでにインターネットに接続している人やプロセス、データを融合させることで新たな価値を生み出すという考え方で、両者は次元が異なります。
――IoEはIoTも包含し、よりトータルな概念になりますね。
平井 そうです。IoEは世の中に存在するあらゆるものを融合していくという考え方になります。そのIoEを実現していく過程で注目すべきキーワードの1つが、ACI(Application Centric Infrastructure)です。これは物理および仮想のネットワーク上のITリソースを可視化し、アプリケーションからそれらを統合管理できるようにする技術で、SDN(Software-Defined Networking)も含めソフトウェアやハードウェアなどを統合的に管理しようというものです。
もう1つのキーワードが「Intercloud(インタークラウド)」です。IoEをビジネスとして実現するには、パブリッククラウドやプライベートクラウドなど多様なクラウド同士をつなぐことで企業のアプリケーションのポータビリティを高めることが必要になります。
また、運用やセキュリティに関する共通のポリシーを提供すると、人やデータ、モノなどがネットワークとつながってビジネスモデルやサービスを作るときに柔軟性や可用性が確保されます。
IoEを実現するためにインタークラウドが重要であり、それを支えるアーキテクチャとしてACIがあるというように、これら3つは階層的に相互連携しています。
――IoEを支える概念として、シスコでは「フォグコンピューティング」も提唱しています。
平井 フォグ(霧)とは、クラウド(雲)よりも地上(現場)に近いことから、膨大な量のデータをデータセンターで集中的に管理するのではなく、エッジの部分である程度処理するという発想です。必要なときだけ機能する仕組みで、IoEを推進する上で重要な考え方になります。