SPECIAL TOPIC通信事業者が「AI Grid」の担い手に AIサービス収益化の新地平を切り拓く

AI業界の主戦場はモデル開発から、「いかに使わせるか」というフェーズへと急速に移行している。推論インフラの整備と、その上に積み重なるサービス・エコシステムの厚みが問われるこの新フェーズにおいて、NVIDIAが提唱するのが「AI Grid」構想だ。通信事業者はその担い手となることで、新たなAI市場を定義することができる。

国内キャリアはすでに分散型AIインフラへ動き出した

実際、NTT、KDDI、ソフトバンクの国内3大キャリアはすでに、それぞれビジョンのもとで分散型AIインフラの構築を進めている。

NTTグループは「AIOWN」構想の下、AI用途に応じてGPUや通信網、電力を最適配分する次世代インフラ戦略を推進。KDDIは低遅延の通信網と、AIデータセンターを統合した次世代デジタルインフラを構築。「デジタルベルト構想」を掲げて、主要都市を軸に推論拠点を全国展開する戦略を進める。ソフトバンクも、全国数カ所の大規模AIインフラ(Core Brain)と、各地に分散する計算基盤(Regional Brain等)からなる次世代AIインフラの一体整備を進めている。いずれも、エヌビディアが提唱するAI Gridとその目的や方向性を同じくするものだ。

これには、大きく2つの理由がある。

1つは、電力の地方分散だ。巨大なAIデータセンターを1か所に集中させることは、電力インフラの観点から困難を伴う。地方に分散させることで電力を確保。さらに、既存の通信ビル・局舎等のレガシーアセットを活用すれば、分散AIインフラの建設コストと時間を圧縮できる。これが2つめの理由である。

通信事業者によるAI Grid構築を後押しする要素はもう1つある。「ソブリンAI」の台頭だ。

ソブリンAIとは、国家や企業が自らのデータの主権を維持し、安全なインフラ上でAIを運用・管理することを指すが、これは「データの主権」「モデルのセキュリティ」「ネットワークインフラのセキュリティ」という3つの観点を包括する概念でもある。自国・自社内のデータを外部に漏洩させることなくLLMのトレーニングや推論を実行すること、AIの動作とそのリスクを制御し、モデル自体の安全性を確保すること、そして、分散化が進む中で、データ流通経路や計算基盤そのものの安全性を維持すること。これらすべてを実現する“適任者”は、データセンターと光ネットワーク、安全・安定したインフラ運用の実績を持つ通信事業者の他にない。

各国でソブリンAIが政策課題となる中、国家安全保障と経済成長の両面から「自国内でAIを完結させる」体制構築の担い手として、通信事業者への期待は世界中で高まっている。

AI Grid成功の鍵は5層のケーキとエコシステム

ここで忘れてならないのは、AI Gridは通信事業者単独で完結させるビジネスモデルではないことだ。「エコシステム」こそが鍵だと田上氏は強調する。

エヌビディアは、①エネルギー(用地・ 電力供給層)、②チップ(AI半導体)、③インフラ(ネットワーク/クラウド)、④AIモデル、⑤アプリケーションから成る「5層のケーキ」でAIの産業構造を描く(図表2)。AI Gridは③と④の中間層として、インフラとサービスを橋渡しするプラットフォームの役割を担う。

図表2 AIの5層のケーキ(AI産業を支える階層構造のフレームワーク)

図表2 AIの5層のケーキ(AI産業を支える階層構造のフレームワーク)

①や③はまさに通信事業者の得意分野だが、②を提供するチップベンダーや③ネットワークベンダーとの連携なくしては成り立たない。④モデルについてはNTTの「tsuzumi」やソフトバンクの「Sarashina」のように自身が開発するケースもあれば、KDDIのようにスタートアップのELIZAと連携するケースもある。そして、最上位の⑤アプリケーション層は、パーソナルAIや映像解析等のサービスを開発・提供するISVとの協業が不可欠だ。

加えて、「Large Telco Model」も注目に値する。通信事業者自身が、ネットワーク運用・制御を自動化するAIモデルのユーザーになりながら、そのノウハウをサービスとして外販するという収益化モデルが生まれつつある。経営戦略において重要なのは、自社がどの層に注力し、どの層をパートナーに委ねるかという「役割分担の設計」だ。通信事業者としての競争優位を活かしつつ、各層のパートナーと緊密な連携を築くエコシステム戦略こそが、AI Grid時代の収益化を左右する。

追い風は確実に強まっている。社会・産業全体が、ソブリンティを担保しつつAIワークロードを届けてくれる新たなプラットフォーマーを待ち望んでいる。「AIを使いたい」というニーズはすでに充満しており、「クラウドに出したくない、でも社内でAIを活用したい」というエンタープライズ顧客のニーズは、通信事業者が提供するセキュアなAI Gridと、まさに符合する。

世界でも有数のインフラ資産と全国ネットワークを持つ日本の通信事業者は、その声に応えなければならない。

<お問い合わせ先>
エヌビディア合同会社
お問い合わせ窓口:https://nvj-inquiry.jp/

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