医薬品の営業現場では、専門的な学術情報を正確に伝える必要があるため、多くの資料が必要となる。しかも、いつ、どの薬品の資料が必要になるかはわからない。そのため、医薬品業界での営業職にあたる医薬情報担当者(以下、MR)は従来、大量の冊子やカタログなどを持ち歩かなければならなかった。
営業活動支援のため、全国のMRにiPadを配布
MRが抱えるこうした課題を打開するため、明治グループの薬品会社、Meiji Seika ファルマが選んだのは、iPadだった。導入開始は2010年冬と医薬品業界内でも早く、今では約900台のiPadが営業所や営業現場で使われている。iPadを通じて医薬品情報の検索データベースにアクセスしたり、医師にiPadの画面を見せながら複雑な薬理作用や医学情報を的確に伝えられるようになっている。
「iPadさえ持っていれば、すべての資料がすぐ取り出せるという安心感は大きいようです。紙の資料を完全になくすことはできませんが、ペーパーレス化にも効果を発揮していると思います」とMeiji Seikaファルマ 医薬業務管理部長の吉田優氏は語る。
Meiji Seikaファルマ 医薬業務管理部長 吉田優氏 |
2010年のiPad導入当時には、通信キャリアに選択の余地はなかった。しかしその後、KDDIからもiPadが提供されるようになったことから通信キャリアの再検討を行い、KDDIへの移行が決定した。
「携帯電話はKDDI、iPadは他の通信キャリアと契約が分かれた状況だったのですが、比較検討のうえでKDDIに集約することに決めました。現在はリプレース時期が訪れたものから順次、通信キャリアの移行を進めているところです」
iPadを使って医師に説明することで、複雑な薬理作用や学術的な情報を正確に伝えられるようになった(写真はイメージ) |
単に通信キャリアを移行しただけではなく、iPadの使い方も月日を追って進化している。現在では、営業支援システムなどの業務システムもiPadから利用可能だ。リモートデスクトップ接続により、外出先でも社内にいるのと同じように働ける環境を整えている。