本格普及に向けた3つの取り組み
——具体的には、どのような取り組みを進めていきますか。
小西 3つあります。
1つめは、情報の整理・可視化です。現状、760MHz帯ITSが「どのような用途で使えるのか」「導入時に何に留意すべきなのか」といった情報が十分に整理されているとは言えません。そこで、導入効果や技術的特性、メリットなどを分かりやすく整理し、関係各社に共有していきます。
2つめは、路側機の導入を検討する事業者・自治体への支援です。路側機を本格的に設置・運用する前に、導入計画や運用面での懸念について相談できる場を設ける予定です。混信・干渉リスクなどの課題についても事前に共有し、円滑な路側機の導入につなげることを目指しています。
3つめは、産官学連携による普及促進活動です。コンソーシアムの会長は東京大学大学院工学系研究科の羽藤英二教授、副会長も同学の井料隆雅教授が務めており、警察庁や業界団体のITS Japanにも参画いただいています。
コンソーシアム自体は路側機の整備主体ではありませんが、今後は地方公共団体や交通事業者、自動車メーカーなど幅広い関係者に参加を呼びかけ、各ステークホルダーの要望を集約しながら、産官学連携で普及に貢献していきたいと考えています。
佐竹 日本ではトヨタ自動車が2015年、760MHz帯を活用したV2VとV2Iによる運転支援システム「ITS Connect」を開発し、2025年12月時点で一般車両や救急車など累計66万台の車両に搭載されています。しかし、他の自動車メーカーでは搭載が進んでおらず、普及は限定的です。また、信号付きの交差点は日本に約20万あると言われていますが、路側機は100カ所程度の設置に留まっています。
ただ、国土交通省が「2035年頃までに新たに市場に投入される車が原因となって引き起こされる死亡事故をゼロとする」という目標を掲げているなかで、自動車メーカーやベンダー、自治体などの間でもITSへの関心が高まりつつあります。これら大きく3つの取り組みを通じて、760MHz帯ITSの健全な普及につなげていきたいと思っています。
——京セラとしては、760MHz帯ITSの本格普及にどう貢献していきたいと考えていますか。
佐竹 2024年10月、京セラの横浜事業所に、各種センサーを取り付けたスマートポールを複数台設置したテストフィールドをオープンしました。現在は自動車メーカーや関係省庁などと実証実験を行っていますが、今後は路側機の導入を検討する事業者や自治体にも活用してもらいたいと考えています。

京セラ横浜事業所のテストフィールドに設置されたスマートポール。ポールに搭載されたセンサーが歩行者や自転車を検知し、車両に通知する
また、当社が開発した路側機の提供に加え、ITS向け半導体の開発にも取り組んでいます。京セラとしては、より低消費電力かつ低コストの半導体を開発し、2026年度以降に量産化、2027年以降に国内自動車メーカーの量産車への搭載を目指して準備を進めています。

京セラが開発する760MHz帯無線通信用SoC/モジュール
760MHzと5.9GHzは共存
——5.9GHz帯をITSへ割り当てるための議論も進んでいます。欧米では、すでに自動運転向けの用途で活用され始めていますね。
佐竹 5.9GHz帯の割当によって760MHz帯が不要になるわけではありません。各車両の位置や速度、方向などの基本的な情報を760MHz帯で配信し、より大容量なデータ5.9GHz帯で扱うなど、ユースケースに合わせたハイブリッド型の運用が主流になると我々は考えています。
——今後の目標についてお聞かせください。
佐竹 個社だけでは実現が難しい取り組みも多いため、コンソーシアムに参加する6社がそれぞれの技術を持ち寄り、760MHz帯ITSの普及に貢献していきたいと思っています。
京セラとしても、これまで培ってきた無線技術に関する知見を生かしながら、事業に直結する技術開発を進めていきます。最終的には、「交通事故ゼロ」という社会課題の解決に少しでも寄与できればと考えています。














