製品への組み込みをゴールに
製造現場のニーズを反映したIoTデバイスや可視化ツールが増えたことで、IoT導入の技術的なハードルは着実に下がっている。一方、プロジェクトを継続的な成果につなげるには、全社展開やビジネス設計の視点が重要になるという。
成功の鍵として挙げられるのが、早い段階での経営層の関与だ。現場主導で始まった取り組みでも、全社的なDX戦略や投資対効果が不明確なままではPoC(概念実証)で終わるケースが少なくない。経営層への報告や予算確保を見据えた計画づくりが求められる。
また、IoTを自社製品やサービスに組み込む視点を持つことで、プロジェクトの位置付けが変わる場合もある。製品の稼働状況を遠隔から把握したり、性能改善や保守サービスにデータを活用したりする取り組みは、事業としての価値が明確になりやすい。
こうした段階に進んだ企業では、データ活用の範囲も広がっている。設備稼働率の可視化や保全業務の効率化、品質データの分析などだ。
例えば、設備データを分析してメンテナンス時期を最適化する取り組みや、遠隔からの設備制御などがその例だ。
バルブメーカーのキッツは、バルブの開閉動作を監視するだけでなく、異常の兆候を検知して通知する保全サービスを提供している。また、機械要素部品メーカーのTHKも、部品の予兆検知や工作機械の工具監視など、製造現場のロス低減を目的としたソリューションを展開している。
「現場の判断」をAIで自動化
既存設備を変更せずにデータ収集を行える後付けIoTであれば、製造現場でのAI活用にも着手しやすい。
その1つが、カメラとAIを組み合わせた活用だ。現場に設置したカメラの映像をAIが解析することで、製造ライン上の異常個体の検知や設備の状態判定など、これまで人が行っていた作業の一部を自動化する試みが始まっている(図表)。アナログメーターや計器の数値も、個別にデータ化して送信するのではなく、映像として取得した情報をAIが読み取る方法が使われるようになってきた。
図表 カメラ映像とAIによる視覚的判断の例
このような仕組みでは、映像データの伝送やクラウド連携を支えるネットワークの役割も重要になるが、通信機能を備えたカメラを工場内に設置するだけで監視環境を構築できる構成は、既存の工場ネットワークを変更せずに導入できる点でも注目されている。
さらに、近年は生成AIの普及によって、現場の運用ルールや判断基準を自然言語でAIに設定する試みも始まっている。熟練技術者が現場で行ってきた判断をAIが実施するロジックとして設定し、視覚的判断を行わせるのだ。例えば「積雪が一定量に達したら融雪装置の温度を上げるといった運用ルールを自然言語で設定できるため、ITやAIの専門家でなくても、現場の技術者が直接、AIを活用しやすくなっている」(服部氏)。
後付けIoTには、工場ネットワークのツギハギ化を助長し、全体最適が後回しになるという懸念もある。
とはいえ、ネットワークの再構築が重荷で、IoTやAIの活用が進まないのであれば本末転倒だ。後付けIoTで効果を実証しながら、並行して工場ネットワークの再設計を検討する——。こうした段階的なアプローチが最適解となるケースは少なくないはずだ。










