イーサネットフレームを素通し
イーサネットベースで構築された産業用ネットワークへ、どのように5G通信を組み込むのか。実装形態についても見ておこう。
図表2は、今回の実証の構成を示したものだ。中央の5G区間(UE:端末、gNB:基地局、UPF:ユーザーデータ処理)と、両端の産業用機器(PLCマネージャー局/ローカル局)を、「DS-TT」「NW-TT」と呼ぶソフトウェア機能がつないでいる。TT はTSN Translatorのことで、デバイス側(DS)とNW側(NW)で、有線イーサネットと5Gを仲介する。
図表2 TSN over 5G 実証における産業用機器の接続構成図

今回の実証に使用した産業用機器の構成
このDS -TTとNW-TTの開発を担ったのが村田製作所だ。同社 ネットワーク技術開発部の松本雄介氏は「通信モジュールやドライバーの開発、リアルタイム処理技術など、これまで培った技術が生かされた結果」と話す。

村田製作所 ネットワーク技術開発部 松本雄介氏
今回の実証成功のもう1つのポイントは、イーサネットフレームの“素通し”、つまりL2伝送だ。
5GネットワークはIPベースであり、産業用機器との接続の際にイーサネットフレームをIP変換するとなると、オーバーヘッドが生じて、それが新たなボトルネックとなる。「クアルコムとの連携によって、イーサネットフレームをそのまま5Gネットワーク上で伝送する機能を試作し、実装した」(小林氏)ことで、これを解決。濱口氏は、「1μsの精度を守ることも含めて、世界中の工場で使用されている既存の産業用機器をそのまま5Gネットワークに統合して無線化できる可能性がある。ビジネス的に非常に優位性がある」とその意義を強調する。
ローカル5GでもTSN実装
TSN対応は、ローカル5Gでも始まっている。クアルコムのTSN対応モデム「Snapdragon SDX72-3」を採用して、ローカル5Gシステムを開発・提供するISLネットワークスが1月に、5G TSNシステムをリリースした。クアルコム シーディーエムエー テクノロジーズ IoTタスクフォース プロダクトマーケティング シニアマネージャーの大津行洋氏によれば、X72-3は世界初のTSN対応5Gチップセットであり、ナノ秒レベルの時刻同期の補正機能を持つ。「現在は、Rel.16対応だが、gPTPを含むRel.17に対応するチップもリリース予定だ」

クアルコムシーディーエムエーテクノロジーズ IoTタスクフォース プロダクトマーケティング シニアマネージャー 大津行洋氏
gPTPは、TSN向けにカスタマイズされた時刻同期プロトコルであり、産業オートメーションにおける確定性通信を保証するもの。次期製品ではチップレベルでこれをサポートする。また、Rel.16仕様では、5GシステムをTSNブリッジとして動作させるためのCNC(Centralized Network Configuration)と呼ぶ仕組みが必要だったが、Rel.17では、5Gネットワーク側にCNCの役割を一部吸収して確定性通信をサポートすることが可能になるという。
「ISLやソフトバンク、村田製作所といったパートナーだけでなく、三菱電機等からも、5G TSNへの関心は高い」と大津氏。国内製造業のスマートファクトリー化の推進役の1つとして期待される。











