<連載>ミリ波のチカラ -超高速通信がもたらす新しい体験-[第11回]KDDIが考えるミリ波の新ユースケース3選、ソニー・TBSとも連携

前回(第10回)は、ミリ波のポテンシャルを最大限に引き出すため、効率的なエリア展開を実現するKDDIの新型「ミリ波中継機」の特徴と、新宿エリアで検証した実力を紹介した。今回のテーマは、そのKDDIが考えるミリ波のユースケース。ソニーやTBSと連携した用途開拓の取り組みをレポートする。

決定的瞬間の映像・画像を即共有

ミリ波のユースケースはコンシューマ向けにとどまらない。もう1つのユースケースとして、「法人向け高精細画像・映像アップロードソリューション」での活用がある。

スポーツイベントの現場では、プロカメラマンがゴールシーンなど決定的瞬間を高速連写で撮影し、その画像を即座に編集部や配信チームと共有するニーズが高い。しかし現状は、撮影後に決められた拠点へ移動し、有線ネットワークに接続してアップロードするケースが多く、伝送の待ち時間や移動時間がボトルネックとなっている。

ここにミリ波を適用することで、カメラや端末から4Kクラスの高精細な連続写真データを、撮影したその場からワイヤレスで高速アップロードすることが可能になる。

混雑したスタジアムやアリーナの中でも、ミリ波の広帯域を活用すれば、数多くの高解像度画像を短時間でクラウドや編集拠点に送り出せるため、撮影から配信・露出までのリードタイムを大きく短縮できる。結果として、決定的瞬間の写真をほぼリアルタイムにニュース配信やSNS、会場内演出に反映させるといった新しい体験価値の創出につながる。

「KDDI SUMMIT 2025」において、ソニーと連携し、4Kの高精細な連続写真(5秒連写80枚、0.8GB)をソニー製のポータブルデータトランスミッター「PDT-FP1」を用いて高速アップロードするデモを実施した。Sub6とミリ波でアップロード速度を比較し、ミリ波の高速なアップロードにより、決定的瞬間の共有が迅速化できることをデモ会場に来場したお客さまにご体感いただいた(図表2)。

図表2 KDDI SUMMI 2025 での法人向け高精細画像アップロード

図表8 KDDI SUMMI 2025 での法人向け高精細画像アップロードデモの様子

デモエリアとなった高輪ゲートウェイ駅前でのアップリンク通信速度は、Sub6でも約100Mbpsと十分であったが、ミリ波ではその約5倍となる約500Mbpsの速度を実現し、アップロード時間の大幅な短縮が可能であることを示した。

法人向け高精細画像アップロードデモの様子

KDDI SUMMI 2025 での法人向け高精細画像アップロードデモの様子

映像制作ワークフローを変革

こうした画像アップロードの高度化にとどまらず、ミリ波は映像制作やライブ中継など、法人向けの映像ワークフロー全体を変革する基盤としても活用可能である。

とりわけ、大規模イベントやスポーツ中継の現場では、ミリ波ならではの超高速・大容量を生かすことで、これまでの常識を変える映像制作ワークフローが現実味を帯びてきた。

従来、リアルタイム映像の送信には、固定回線や専用の映像線の敷設が前提だった。ケーブルの取り回しや設置・撤去の手間、設置位置の制約が大きく、演出やアングルの自由度にも限界があった。

だが、ミリ波とネットワークスライシング技術を組み合わせることで、映像伝送に必要な帯域や品質をネットワーク側であらかじめ確保しつつ、複数の高精細映像ストリームをワイヤレスで効率的に伝送することが可能になる。

これにより、会場内を自在に動き回るカメラから、臨場感あふれる映像をリアルタイムで送り出すことができる。現地観戦はもちろん、テレビ放映やインターネット配信においても、新しい視点やダイナミックな演出を提供できるようになる。

KDDIは、こうした将来像を見据えた実証実験や商用提供も進めている。

ミリ波を活用した映像中継現場の様子

ミリ波を活用した映像中継現場の様子

2025年11月14日に豊田スタジアム、2025年11月18日に国立競技場で開催された「キリンチャレンジカップ2025」の映像中継においては、Sub6とミリ波を動的に切り替えながら利用する「マルチバンドスライシング」をTBSテレビへ提供した(上写真)。大規模イベント会場などにSub6およびミリ波エリアを構築し、複数のカメラ映像をSub6とミリ波経由で伝送することで、安定した高精細映像の中継が可能であることを確認している。

固定回線や映像ケーブルを敷設することなく、高精細映像の撮影・配信が行えることから、設営リードタイムの短縮や、カメラポジションの自由度向上といった運用面の効果も見えてきている。さらに会場の臨場感をそのまま遠隔地に届けることができ、まるで現場にいるかのような没入体験を提供できる。

こうした法人向け次世代画像・映像ソリューションを通じて、ミリ波のユースケースはリアルなビジネス現場へと広がり、エンターテインメントやスポーツ、報道など、多様な産業領域で新しい価値が次々と生まれていくだろう。

柴山昌也(しばやま・まさや)
KDDI所属。2015年よりKDDI総合研究所にてミリ波の特性分析に従事。2019年にKDDIに帰任し、2022年から現在までグループリーダーとしてミリ波エリアを効率的に拡張する中継技術の開発を主導

小林龍司(こばやし・りゅうじ)
KDDI所属。2019年より5Gに関わる基地局新機能の要件定義や新技術検討を担当。その後先進技術の検討・開発・評価の業務に従事。主に高周波数帯域であるミリ波の技術検討を行い、KDDIのミリ波活用検討を推進中

相楽昌希(さがら・まさき)
KDDI所属。これまで2.3GHz帯周波数共用や28GHz帯ミリ波利活用推進などの業務に従事。周波数利用効率の向上を通じたモバイルネットワーク高度化に取り組み、どこでも高速・高品質な通信環境の実現を目指している

櫻井博貴(さくらい・ひろき)
KDDI所属。西新宿や新宿駅でのミリ波中継器実証をはじめとする、28GHz帯ミリ波の新技術検討・開発などの業務に従事。5Gの高度化と新技術の普及を促進し、より高速で快適な通信環境の実現を目指している

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