「新規参入の余地が大きいドローン・宇宙」 地経学研究所 小木氏に聞く防衛産業の商機

防衛産業は「需要超過」の時代を迎えている──。防衛省を経て、現在は防衛産業などを専門とする地経学研究所の小木洋人氏に、防衛産業の現状と新規参入チャンスについて解説してもらった。

通信は大手プライムと協業を

――これまで防衛産業との関わりが薄かったICT関連企業が、日本の防衛産業強化に貢献できるとしたら、どういった領域でしょうか。

小木 まず、通信・システム分野では、ベンダーロックインが進んでおり、初期投資額も相当大きいため、単独での新規参入は難しいと思います。とはいえ、政府は当然、新しい技術を求めています。大手プライムとパートナーシップを組んで提案するというのが、当事者全ての観点から見てもコストパフォーマンスに優れていると思います。

新規参入の余地が大きいのはドローンです。特に自爆型の攻撃ドローンについては、日本国内には大手プライムも含めて生産基盤がほとんどありません。スタートアップ等の提案が強く求められていると思います。

ただし、民間で培ったノウハウが即座にそのまま使えるかというと、そうではありません。民間用ドローンの多くは、建設工事向けの観測・測量ドローンなどです。そうしたドローンも必要ですが、今一番求められているのは攻撃ドローンです。ドローンに爆弾を積載するには、火薬の取扱法令にも従う必要があります。

さらに宇宙関連も挙げられます。12月には、防衛省の「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」を三菱電機ら7社が落札しました。7社の中には衛星を開発するスタートアップも含まれていますが、今後の需要を見込むと、衛星本体を提供する企業のキャパシティはまだまだ拡大する必要があると思います。

スタートアップの注意点

――スタートアップ等が注意すべき点はありますか。

小木 防衛装備品の場合、量産を見越した提案が求められますが、そのための設備投資や人員確保の視点が意外と抜け落ちがちです。加えて、防衛装備品の契約の多くが複数年度にまたがるため、国の会計法令上、支払いのタイミングがどうしても納期近くに集中することになります。それを前提とした場合、スタートアップにとっては資金繰りが大変です。

――海外では、防衛関連のスタートアップは増えているのですか。

小木 ウクライナ戦争の始まる2022年以前から、スタートアップは徐々に増えてきている印象があります。背景には、既存の防衛企業では提案できないAIなどのテクノロジーの重要性が高まっていることがあります。

米国などでは、プライム企業が次々とスタートアップを買収してその技術を取り込む一方で、また新たなスタートアップが育っているという好循環も生まれていると聞きます。

ウクライナ戦争では「Deltaシステム」というアプリに注目が集まりました。ドローンなどが取得した敵目標の位置情報をグーグルマップのようにタブレットやスマートフォンなどに表示できるものです。開戦前からウクライナ政府の支援を受けて開発が進められ、戦争を機に一気に活用が進みました。軍事作戦の肝となる指揮統制システムにおけるイノベーションとして注目されています。

伝統的な防衛企業には、Deltaシステムのようなアプリは、あまり思いつけません。スタートアップには、こうした民生品の発想を踏まえた製品の構想力が期待されていると思います。

小木洋人氏

防衛省で16年間勤務し、2022年9月から現職。専門は、安全保障、戦略研究、防衛産業。主な著作に、『衰退から拡大へ:「需要超過」時代の防衛産業』(共著、地経学研究所、2025年)など。2007年東京大学教養学部卒、2012年米国コロンビア大学国際関係公共政策大学院(SIPA)修士課程修了

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