民生先端技術等の早期装備化へ
こうした「新しい戦い方」に備えるため、民生先端技術等の早期装備化に向けた取組の中で、特に重視して取り組んできたのが無人アセットだ。
政府は2026年度から「無人アセットによる多層的沿岸防衛体制(SHIELD)」(図表2)の構築を進めるが、そのために大量導入予定の無人アセットの中にも、早期装備化に向けて取り組んできた無人アセットの実証結果が反映されているという。隣国と陸続きの欧州と違って、日本は周辺を海で囲まれている。そこでSHIELDでは、UAV(無人航空機)からUSV(無人水上艇)、UUV(無人潜水艇)まで多様な無人アセットが整備される。
図表2 無人アセットによる多層的沿岸防衛体制(SHIELD)のイメージ

これらの無人アセットの制御には当然ネットワークが欠かせないが、防衛省の担当者は、「日本のUAVは、海上で長距離運用することを想定しておく必要がある」として、HAPSや衛星通信への期待を口にする。
防衛省の担当者はこうも言う。「ウクライナではStarlinkが広く使われているが、戦線を維持するうえで、民間衛星の役割は極めて重要になっている」。「新しい戦い方」では、宇宙領域の活用が大きな鍵の1つとなる。
マルチ網で常時接続の実現
テクノロジーの急速な進展が「新しい戦い方」への対応を迫るなか、政府は2025年7月、「防衛省次世代情報通信戦略」を発表し、「新たな防衛情報通信基盤(仮称)」を整備する方針を示した。
「問題意識としてあるのは、大容量かつ低遅延な高速ネットワークで常につながっていなければならない、ということだ。どこかが途切れても、冗長性を持たせて、マルチネットワークで常につながっていることが重要。だから、衛星通信やHAPSなど、何か特定の1つのネットワークに集中するということではない。新しい戦い方に対応していくには、意思決定を迅速化しなければならず、そのためにはリアルタイムな情報伝達やAIの活用などが必要であり、強靭で常につながるネットワークが不可欠という考え方が、この次世代情報通信戦略の根本にはある」と防衛省の担当者は語る。
衛星通信やHAPS、ローカル5G、オール光ネットワーク、量子暗号通信など、この目的に資するネットワーク技術であれば、積極的に活用していくという。
新たな防衛情報通信基盤(仮称)は、4層構造になっている(図表3)。第1層のセンサー・シューター層で各種レーダー、衛星、航空機等から情報を収集。第2層であるネットワーク・インフラ層の様々なネットワークを組み合わせた強固かつ柔軟なマルチネットワークで伝送する。第3層のデータ層の役割は、AIやデジタルツイン、クラウド、エッジ基盤を活用したデータの効率的な処理・最適化だ。そして、第4層のサービス層上での各種アプリケーションの操作を通じて、データ層で最適化されたデータを出力し、センサー・シューター層で使用することで作戦を実施する。センサー・シューター層で収集した情報を同層において即時に処理・最適化し、ネットワーク・インフラ層に伝送するなどして、さらに作戦遂行の迅速化も検討するという。
図表3 新たな防衛情報通信基盤(仮称)のアーキテクチャのイメージ

出典:防衛省の資料を基に作成
防衛省の担当者によれば、「構築時期は決めていないが、防衛省・自衛隊として、目指すべき方向性の最終形態をコンセプトとして示した」。防衛省次世代情報通信戦略の文書の中には、「技術の進展に伴う変更や作戦上の要求を適時適切にプラットフォームに反映するため、従来のウォーターフォール型の開発形式から、フィードバックを詳細に反映するアジャイル型の開発形式を追求する」という記載もあり、この“最終形態”を目指して順次整備を進めていくということのようだ。
「特に通信分野については、民生技術を活用することが多くなっている」と防衛省の担当者は話すが、様々な民間発の技術が貢献できるはずだ。











