5G通信や計算リソース提供
DePINは通信、コンピューティング、ストレージ、センシングなど、さまざまな領域で実装が進みつつある(図表2)。
図表2 DePINのプロジェクト事例

通信分野の代表例が、米国発のプロジェクトである「Helium」だ。Heliumは2019年、個人が設置した無線機器によってIoT向けのLoRaWANネットワークを構築する「Helium IoT」としてスタート。その後2023年に一般のモバイル端末向けに通信サービスを提供する「Helium Mobile」が開始した。
Helium Mobileでは、対応する無線機器を購入し5G基地局やWi-Fiホットスポットを開設すると、設置者に報酬としてトークンが付与される。こうした分散型のネットワーク構築により、広大な地域を効率的にカバーできる点が特徴で、現在米国とメキシコで展開が進められている。
計算資源やストレージを分散的に共有する取り組みも、DePINの重要なユースケースだ。2020年に始まった「Akash」は、ユーザーが保有するCPUやGPU、メモリ、ストレージといった計算資源をネットワーク経由で提供し、アプリケーションの実行環境として利用できる(図表3)。
図表3 DePINによる演算資源の集約利用のイメージ

Akashでは、利用者が必要とする実行環境を定義し、それに対してリソース提供者が価格を提示する。最終的にはオークション形式でマッチングが行われ、成立した取引に応じて報酬がトークンとして支払われる。この仕組みにより、構成や条件によっては、ハイパースケーラーのクラウド基盤と比較してコストを2~3割抑えられるという。
こうしたDePINの取り組みは米国を中心に広がっており、アジアでは韓国やシンガポールなどで概念実証(PoC)が進められている。
国内では“位置ゲー”から
一方、日本国内ではまだ事例は限られている。特に通信分野においては、Heliumのような仕組みを国内で展開する場合、電波法や電気通信事業法といった法制度面での調整が必要になるなど、インフラ分野ゆえのハードルが存在するという。
そうしたなか、日本において一般ユーザーが参加できるDePINの事例が2024年にサービスを開始した「PicTrée(ピクトレ)」だ。ユーザーは位置情報ゲームに近いインターフェースを通じて、電柱やマンホールなどの電力インフラ設備を撮影・投稿する。集められた画像データは、電力事業者が設備点検や保守業務に活用し、投稿者には内容に応じて報酬が付与される。
これは、一般市民が日常の行動を通じてインフラ維持に関与できる点で、DePINの可能性を示す事例といえる。會田氏は、「PicTréeのような取り組みが積み重なっていけば、DePINの普及が進んでいくのではないか」と期待を寄せる。
国内では今後、インフラ維持を担う人材不足がさらに深刻化する。DePINを活用すれば、車載カメラによる道路状況の把握や、通信品質の測定といった形で、人々が日常生活の延長線上で社会インフラの維持に貢献できるだろう。「ブロックチェーン技術そのものはすでに成熟し、社会実装の段階に入っている。いまこそ、社会的意義をインセンティブとするDePINの考え方を広げていくタイミングだ」と、會田氏は強調する。













