ソフトバンクが語る5G SA戦略 通信品質向上に向けた4つのテクノロジーとは

ソフトバンクが5G SA(Stand Alone)エリアを広げている。2025年10月時点での5G SAエリアは、同年3月比で約13倍に増加したという。また、5G SAの本格展開に向け、「CA(キャリアアグリゲーション)」「アップリンクの強化」「Massive MIMO」「AI活用」という4つのキーテクノロジーに注力する。

キャリアアグリゲーション+C-RANでユーザー体感品質を向上

ソフトバンクでは、5G SAの本格展開に向け、4つのキーテクノロジーに注力している。

1つめが、複数の周波数を束ねるCA(キャリアアグリゲーション)で、最大5CC CA(5波キャリアアグリゲーション)で215MHzの帯域幅を確保。これにより、瞬間的なスループットを大きく向上させられるほか、混雑時でも複数の周波数にトラフィックを分散させることで通信の安定性が高まり、エリア全体でユーザーの体感品質を底上げできるとした。

また、基地局の制御装置(BBU)を集約して設置するC-RAN(Centralized RAN)構成により、複数セル・周波数を一元的に把握しながら、端末ごとのスケジューリングやCA構成を柔軟に決めやすくなるという。なお、全国に設置されたソフトバンクの5G基地局のうち、約80%でCAが利用可能のことだ。

C-RANを活用した柔軟なキャリアアグリゲーションを実現

2つめが、アップリンク(UL)の強化である。「TDD単体で、例えばSub6の周波数を用いる場合、端末からのUL側の信号が基地局まで届かず“パケ詰まり”が発生してしまい、結果カバレッジが狭くなってしまう」と大矢氏は指摘。そこでソフトバンクでは、TDDとFDDを組み合わせたCAを採用。これにより、UL速度は約30倍、通信可能エリアも約50倍に拡大できるという。

さらに、スマートフォンなどの端末の送信電力を高出力化する「HPUE(High Power User Equipment)」に対応した基地局を全国に約4万6000局展開。端末の送信電力がアップすることで、UL速度は約40倍、通信可能エリアは約10%拡大すると大矢氏は解説した。

HPUE対応基地局でアップリンク速度が約40%向上

3つめが、Massive MIMOである。複数のユーザーに対して同時に異なるデータを送信できるマルチユーザーMIMO(MU-MIMO)を活用することで、従来比約2.8倍のトラフィックを吸収できるようになったという。また、3.4/3.5/3.9GHzに対応したトリプルバンドMassive MIMOの導入により、周波数ごとに無線機(RU)を個別に設置する必要がなくなり、約40%の省スペース化を実現したとのことだ。

トリプルバンドMassive MIMOで約40%の省スペース化を実現

4つめが、AI活用である。現時点では、通信品質の劣化を検知するAIや、電力をコントロールするAIが「それぞれ個別に動いている段階」だが、今後はこれらを統合的に管理・制御するためのAIも開発予定だ。

5G SAを活用したスポット・イベント対策を実施

東京ディズニーランドの最寄り駅である舞浜駅では、5G基地局の増設と5G SAエリアの拡大に向けた取り組みを進めている。2025年12月時点の5G SA通信ログは前月比で約10倍に達しており、東京ディズニーランドの来園客で混雑する時間帯においても、通信を快適に利用できる環境が整いつつあるとした。

舞浜エリアの5G SAログは10倍に増加

また、2025年10月に開催された「池袋ハロウィンコスプレフェス」では、SA方式で提供されるミリ波(28GHz)をFWA(固定無線アクセス)のバックホール回線として活用し、来場者向けの公衆Wi-Fiサービスを提供。3日間で延べ16万人以上が来場した屋外イベント会場において、ミリ波非対応のスマートフォンでも快適に通信できたという。

ミリ波非対応のスマートフォンも快適な通信が可能に

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。