ファーウェイ――「SoftCOM」でキャリア網全体をクラウド化
ファーウェイもキャリア向け製品群について、ハードウェア部分の共通化を進めてきた。無線アクセスネットワーク(RAN)向けの各種装置の大部分は、ハードウェア仕様は共通化されており、ソフトウェアで機能の差分を提供している。固定網向けやOSS/BSS分野も同様だ。こうしたハードとソフトの分離をさらに進め、仮想化やクラウド化への対応を進めようというのが、ファーウェイの「SoftCOM」コンセプトである。
SoftCOMは大きく、次の4つのポイントに分けられる。1つが「Internetized Operation」で、網機能を公開し、クラウド事業者等が活用できるようにする。2つ目の「IT System Cloud-formation」は、通信キャリアにおけるITシステム(OSS/BSS等)をクラウド化しようというものだ。
3つ目は「Network Control Cloudformation」。これは転送機能と制御機能の分離を目指すもので、SDNのキャリア網への適用を指す。そして4つ目に、ネットワーク機能をクラウド化する「Network Function Cloudformation」がある。
モバイル網のシンプル化から着手
ファーウェイは、キャリアインフラ全体でビジネスを展開しており、図表3に示すように、ネットワーク全体を統合的に制御・管理する通信事業者OSの提供を目指している。ファーウェイ・ジャパン ソリューション・セールス本部ネットワークソリューションセールス部チーフネットワークアーキテクトの滝広眞利氏は、「キャリアインフラ全体を手掛けるベンダーこそ、SDN/NFVができる能力を持っている。その意味で、現在の流れは当社にとってチャンス」と話す。
図表3 ファーウェイSoftCOMの基本的な構造 |
具体的なソリューションの準備も進めている。「ネットワーク装置の仮想化や、汎用ハードウェア化によって機器購入費を下げるだけでなく、運用コストも含めて、構造的に全体コストを削減していく」という。
手始めに取り組むのが、モバイルバックホールのシンプル化だ。携帯電話基地局内のルーターの制御にSDNを適用。数千~数万のノードをクラウド上のSDNコントローラから集中制御し、仮想的に1つのルーターのように管理するソリューションの開発を急ぐ。現在、この機能を実装したルーター製品の試作を行っており、欧州キャリアとの共同検証が進んでいる。