250GHzを実現する仕組み
250GHz対応広帯域VNAソリューションは、こうした新たなニーズに応えるものとしてキーサイトが今年9月に発表したもので、日本ではMWE2025で初めて実機デモが公開された。
このソリューションの鍵となるのが、VNA装置の帯域拡張を行う周波数エクステンダと呼ばれる装置で、170GHzまでの測定に対応する「NA5305A」と、250GHzまで対応可能な「NA5307A」の2機種が新たに提供された。
これらを「N5292A テスト・セット・コントローラ」を介して、キーサイトのVNAのハイエンドライン「PNA/PNA-X ベクトル・ネットワーク・アナライザ」と接続することでVNA装置単体では70GHz程度にとどまる測定範囲を170/250GHzに拡大しデバイスやケーブルなどの性能評価(Sパラメーター測定)を行うことができる。
広帯域VNAソリューションでは、N5292Aの2つのポートにつないだ周波数エクステンダの間に対象デバイスを接続して測定を行う。さらに、4つのポートに計4台の周波数エクステンダを接続することで、2対の芯線を用いて高耐電磁干渉性能や省電力伝送を可能にする差動ケーブルの評価を行うことなども可能だという。
PNA/PNA-X ベクトル・ネットワーク・アナライザとN5292Aは、すでに最大110GHz及び120GHzに対応する周波数エクステンダと組み合わせる形で広帯域VNAソリューションとして提供されている。110/120GHz対応VNAを導入しているユーザーは、周波数エクステンダをNA5305A/NA5307Aに交換することで投資を抑えて170GHz/250GHzへのバージョンアップを行うことができる。

250GHz広帯域VNAソリューションの実機デモンストレーション。手前の2つの小型の筐体が250GHz対応周波数エクステンダ「NA5307A」
これまでキーサイトのVNAソリューションでは120GHz以上の測定に対応する場合には、例えば170GHz帯など特定の周波数帯に対応した周波数エクステンダを追加する必要があり、コスト・運用面での負担となっていたが、NA5305AやNA5307Aを用いることで同じ装置で100kHzから170/250GHzという広い帯域の測定ニーズに1台のVNAで対応でき、設定や測定などの作業も大幅に軽減される。
加えて今回、VNAによる測定作業を効率化するツールとして、NA5305A、NA5307Aとともに提供が開始されたのが、「85065A高精度0.5mm校正キット」だ。
NA5305A、NA5307Aでは、120GHzを超える高周波伝送に対応するために、試験対象のデバイスやケーブルとの接続に、コネクター径が従来の2分の1となる0.5mm同軸コネクターを新たに採用しているが、キーサイトではこれを装備した標準器(仕様が明確になっている校正用デバイス)をキーサイトが自ら提供している。
周波数エクステンダの間にデバイスを接続して測定を行う場合、測定値には接続に用いるケーブルやコネクターなどの特性が含まれてしまう。そこで、事前にその環境で標準器のデータを測定することで、ケーブルなどの影響を排除して正確なデータを取得できるようにする(校正)。標準器の提供は専門メーカーが手掛けることが多いが、キーサイトでは、機器とセットで提供することで効率的でより正確な測定が可能になるとしている。
サブTHz帯域のデバイス評価を大幅に効率化する広帯域VNAソリューションの登場で、サブTHzの6G通信機器やAIデータセンター向けの3.2Tbps伝送装置の開発が加速しそうだ。











