ゲートウェイ機器が充実
こうしたWi-Fi HaLowの広がりを支えているのが、デバイスの増加である。国内では特にルーターやブリッジなどゲートウェイ機能を備えた製品が充実してきた。
例えばNECマグナスコミュニケーションズのマルチキャリア対応IoTルーター「uM350R」は、デュアルSIMスロットを備え、Wi-Fi HaLowの運用を容易に始められる。2.4/5GHz帯Wi-Fiにも対応し、多様な機器を収容できるほか、汎用DC電源に対応しており、機器組み込みでの利用にも適している。「豊富な機能を持ちながら、価格は競合製品の同等以下」と、同社 スマートネットワーク事業部 第一営業部の飛田正史氏はコスト面もアピールする。
サイレックス・テクノロジーのWi-Fi HaLow対応アクセスポイント「AP-100AH」は、複数台を中継して最大3kmのエリアをカバーできる。Wi-Fi HaLowを利用して2.4/5GHz帯Wi-Fiの通信エリアを拡張するワイヤレスブリッジ「EX-150AH」と組み合わせれば、既存のWi-Fi環境を手軽に広げられる。
「台湾メーカーはどの企業も日本市場に対して意欲的だ」と、メガチップス ASSP事業部 営業部の林果保利氏は語る。実際、台湾勢はWi-Fi HaLowデバイスの開発に積極的で、日本の技術パートナーやユーザー企業との連携も活発だ。
2025年5月には台湾最大級のIT展示会「Computex」で台湾クラウドコンピューティング&IoT産業協会(CIAT)と共同でワークショップを開催するなど、日本の業界団体である802.11ah推進協議会(AHPC)は台湾メーカーとの関係強化に力を入れている。ワークショップには多様なデバイスが出展され、日台間の技術交流がより進んだ(図表2)。「台湾はハードウェアエンジニアのリソースが厚い。日本のニーズを台湾に共有し、開発スピードを上げていきたい」(サイレックス・テクノロジー グローバルマーケティングセンター 執行役員の綱嶋和也氏)
図表2 2025年5月の台北ワークショップでの台湾メーカーの展示概要

このようなデバイス開発に欠かせないのがチップメーカーである。現在、Wi-Fi HaLow対応チップは豪モースマイクロと米NEWRACOMの2社が提供しており、両社の競争がデバイス開発を後押ししている。
モースマイクロは2025年1月、Wi-Fi HaLowシステムオンチップ(SoC)の第2世代「MM8108」の提供を開始した。第1世代「MM6108」の40nmプロセスを22nmに微細化し、より多くの機能を統合可能にした。これによりリージョン設定が不要なグローバル対応製品となった。性能面では256QAMへの対応により世界最小・最速・最低消費電力クラスを実現。送信効率は3割以上向上し、カメラなどのデバイスが太陽光発電で稼働できるほどの電力効率を達成したという。
また同社は開発者向けのリファレンス機「HaLowLink 2」を2025年9月に発表した(一般販売は2026年第1四半期予定)。MM8108を搭載したゲートウェイで、2.4GHz帯Wi-Fiおよびイーサネットに対応し、開発者が手軽にWi-Fi HaLowの通信性能を評価できる。「HaLowLink 2はあくまで評価用デバイス。量産を希望する企業には設計情報の提供も考えている」と、同社バイスプレジデント兼日本担当カントリーマネージャーの大石義和氏は語り、Wi-Fi HaLowエコシステム拡大への意欲を示す。
エコシステム拡大の観点では、村田製作所によるWi-Fi HaLowモジュールの開発が注目すべき動きだ。Wi-Fi・Bluetoothモジュールで世界トップクラスのシェアを持つ同社の参入は、量産供給体制の確立や品質面での信頼性向上につながることが期待される。













