イオンのモバイル販売事業「小売業の視点活かし低速市場で先駆け」

流通大手イオンが3Gデータ通信カードの販売を始めて2年。携帯電話の新需要を掘り起こし、順調に売り上げを伸ばしているが、そこには小売業ならではの工夫がある。

全国のイオン店舗に売り場を持ち、多様な通信サービスを扱うイオンのモバイル事業は、携帯電話キャリアの回線を利用した3G・LTEデータ通信カードをイオンの販売員が販売するものだ。既存キャリアとは異なるサービスがイオンの顧客満足度の向上にも一役買っている。

イオンのモバイル事業は、2011年6月に日本通信がドコモ回線を利用して提供していた「b-mobileSIM」をイオン専用SIM「イオンSIM」として販売したのを始まりに、2012年9月にIIJの「IIJmio」、今年の6月に一部店舗でBIGLOBEのAndroid OS端末とLTE通信をセットにした「ほぼスマホ」をラインナップに加えた。「イオンのモバイル」の売り場は活況を見せている。

当初は低速でのデータ通信に着目しての販売開始だったが、音声付きや、限定的な高速通信ができるプランなど、ラインナップを段階的に増やしてきた。契約件数は年百数十%単位での純増を続けているという。

図表 b-mobileSIMの料金プラン表
図表 b-mobileSIMの料金プラン表

この「イオンのモバイル」を推し進めてきたのが、イオンリテールだ。イオングループのGMS(総合スーパー)等の事業のイニシアチブをとる中核企業で、顧客満足度の向上等を目的とした「GMS(ゼネラルマーチャンダイジングストア)革新」に取り組んできた部隊だ。取り組みの柱であるデジタルシフト、アジアシフト、大都市シフト、シニアシフトのうち、「イオンのモバイル」はデジタルシフトの一角を担う。

「売り方を知る我々と組めば結果は出る」とMVNOと協業

イオンリテールが携帯電話に着目したきっかけは、2007年9月に総務省が発表した「モバイルビジネス活性化プラン」。同プランにより、様々な業界から通信業界への参入が始まったが、イオンリテールもBtoCの形での市場参入に向け、ヒアリングなどを行っていた。

ほとんどのプレイヤーがBtoBで参入するなか、MVNOでBtoCに取り組んでいた日本通信の事業について「技術的には素晴らしいものをもっているが、売り方を知らないと感じた」と語るのはイオンSIMのプロジェクトリーダーを務めた住居余暇商品企画本部デジタル統括部長の橋本昌一氏。「通信に関する技術力やノウハウはないが、売り方を知る我々と組めば結果は出る」と、日本通信に協業を持ちかけた。

イオンリテール 住居余暇商品企画本部デジタル統括部長 橋本昌一氏
イオンリテール 住居余暇商品企画本部デジタル統括部長 橋本昌一氏

自らがMVNOとなるのではなく、販売代理店の立場をとり、BtoCにおける効果的な価格設定や売り方、売り場の提供をした。

月刊テレコミュニケーション2013年9月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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