Wi-Fiローミングの歩みを詳説 東北大学後藤氏
続いて登壇した東北大学 サイバーサイエンスセンター 准教授の後藤英昭氏は、Cityroam/OpenRoamingの技術的な推移について詳しく解説した。
東北大学 サイバーサイエンスセンター 准教授の後藤英昭氏
OpenRoamingに先立って複数機関を横断した共通認証基盤を提供してきたのが、学術機関向けWi-Fiローミング基盤「eduroam」だ。これは2002年に欧州で開発され、日本は2006年に参加した。大学や研究機関の職員・学生が、所属先のアカウントで訪問先でもインターネットにアクセスできるこの仕組みは、RADIUSプロキシによる認証連携を通じて安全性を確保している。
このeduroamの発展形として登場したのが、Wi-Fi Allianceが推進する「Passpoint(Hotspot 2.0)」およびWBAによる「NGH(Next Generation Hotspot)」構想である。これらはセルラー回線並みの利便性と安全性を備えた公衆Wi-Fiを目指し、SSID選択不要・暗号化通信・認証連携を標準とすることが共通点だ。
この流れを受けて、米シスコシステムズは2019年、これらの標準技術を統合したローミング基盤・OpenRoamingを発表。その後2020年にWBAへ運営を移管し、国際的な展開が本格化した。
主な無線LAN(Wi-Fi)ローミング基盤
日本では、後藤氏らの主導により2018年から「Cityroam」の実証実験が始まり、国内の大学や自治体との連携を通じて基盤整備が進められた。CityroamはOpenRoamingのWBA移管当初から参画しており、国内初のOpenRoaming認定基盤として現在に至っている。現在では東京都の「TOKYO FREE Wi-Fi」や函館、沖縄、京都など、全国各地でCityroam/OpenRoaming対応の基地局が1000カ所以上に達している。
OpenRoamingの基盤技術・仕様
「今こそ安全なフリーWi-Fiの再設計・再構築を」
公衆Wi-Fiの安全性と利便性を向上させる一連の取り組みが評価され、当初よりCityroamプロジェクトに携わってきた中核メンバーが2025年2月、「第7回日本オープンイノベーション大賞」において科学技術政策担当大臣賞を受賞した。
一方で後藤氏は、インバウンド客の増加、災害時の通信手段の多様化、行政のデジタルサービス向上などの様々な観点から「今こそ、安全で、誰もが使えるフリーWi-Fi環境の再設計と再構築が求められている」と力を込めた。また、持続的な発展のためにはビジネスモデルの構築が必要とも指摘した。
Cityroam/OpenRoamingの課題と展望
最後に後藤氏は、「(Cityroam/OpenRoamingの普及を)加速していきましょう。皆さんで盛り上げてもらえれば大変ありがたい」と呼びかけた。