米デルのチーフ・イーサネット・エバンジェリストであり、IEEE802.3baとして標準化された40GbEと100GbEには議長として貢献したジョン・ダンブロシア氏が4月9日、記者説明会を開いた。企業ネットワークにとって不可欠な技術であるイーサネットは今後どのように発展していくのか。ダンブロシア氏は「個人的な見解」と前置きしたうえで解説を行っている。
高速化に伴い、伝送距離は縮小傾向
広く普及しているイーサネット。その規格の数やケーブルの種類は、かなりの数に上っており、今や全体像を把握しにくくなっているのも確かだろう。
そこでダンブロシア氏はまず伝送媒体別に通信速度と伝送距離を整理したスライドを披露。最近のトレンドとして「やはり高速化を図っていくと、どうしても伝送距離は縮まってしまうという状況がある」と指摘した。下のスライドからは、通信速度が上がるに従って、伝送距離は短くなる傾向が見て取れる。
イーサネットの通信速度と伝送距離 |
こうしたなか、いろいろな役割を果たすようになっているのが、SMF(シングルモードの光ファイバーケーブル)である。以下は承認済みの40GbE/100GbE規格だが、多様なニーズに応えるため、SMFを軸にバリエーションが確保されていることが分かる。
40GbE/100GbEの承認済み規格 |
また、40GbE/100GbEの標準化作業はすべて終わったわけではなく、今も以下の規格が追加策定中だという。多様なニーズに対して、さらに細かく応えていくためだ。
追加策定中の40GbE/100GbE |
ちなみにSMFとMMF(マルチモードファイバー)の違いだが、SMFのほうが芯径が細く、MMFは太い。そのためSMFは光の分散を小さくでき、長距離・高速伝送により適している。ただし、曲げに弱いなど取り扱いは難しく、この点ではMMFのほうが優れている。
出来たてほやほやの400GbEのスタディグループ
さて、ここからはIEEE802.3の今後の動きについてだ。
「3週間前に出来たばかりの、出来立てほやほや」というのは、400GbEのスタディグループである。議長代理を務めるダンブロシア氏は、伝送距離についてMMFで20m~100m、SMFで300m~2kmという数字を見込みとして示した。「データセンターの中では、SMFが多用されていくと思う」という。
作業が始まったばかりの400GbE |
また、「非常にエキサイティングなプロジェクト」と紹介されたのは車載用のギガイーサネット「RTPGE IEEE802.3bp」である。さらに車載用イーサネットを使って電源供給を行う「Power over Data Link(PoDL)」の策定も行われているそうで、「これまでのイーサネットはエンタープライズでの利用が中心だったが、様々な用途向けに発展しており、イーサネットの未来は明るい」とダンブロシア氏は語った。