360度撮影に顔認証、人数カウント…… 新機能続々で用途広がるネットワークカメラ

ネットワークカメラ市場の成長が続いている。映像の高精細化と高機能化を背景に、アナログカメラのリプレースが進展。さらに、防犯用途以外の活用法の広がりが、その成長を後押ししている。

運用効率や操作性も向上

これら以外の領域でも、各社は技術開発を進めている。アクシスは、移動する被写体をカメラが自動で追う「自動追跡機能」を開発。固定カメラで広い視野をモニタリングしつつ、動いている人物を小さな枠の中にとらえ、人の移動に追従して枠が動く仕組みだ。盗難防止などに有効だろう。

同社はまた、夜間や明け方など光が不足している環境でも鮮明な映像が撮影できる「ライトファインダー」技術を開発した。肉眼では対象を視認できないような暗所でも、照明なしで、服の色さえ判別できる映像が得られる。「ライトファインダーを製品化して1年間に多くの顧客の指示を受けている」(佐藤氏)。

監視カメラにとっては逆光も悩ましい問題だが、これに関しても「ダイナミックキャプチャー」と呼ぶ新技術を開発した。異なる露出で撮影した映像を組み合わせる技術をべースに実現。時間帯によって店舗入口が逆光を受けるような場合に効果を発揮する。現在はミッドレンジの製品に搭載しているが、今後はローエンド製品にも搭載していく計画だ。

アクシス アクシス
アクシスの「ダイナミックキャプチャー」の映像例(右)。左が通常のレンズで撮影したもので、逆光のために大きなゴーストが発生し、全体的に暗い画像となっている。右は、人間の目に近い映像が撮れているのがわかる

録画・管理サーバーも含めたシステム全体に目を向ければ、モボティックスは、カメラとサーバーを分散システムとして構成することで差別化している。

一般的に録画機能やマルチビュー機能、画像解析、検索機能などのソフトウェアは、サーバー側に搭載されている。それに対してモボティックス製品は、ソフトをカメラに内蔵している。ネットワークとサーバーに対する負荷を軽減できるため、「サーバーは映像データを保存するだけの役割を担うので、高い処理能力を必要としない。また、管理可能なカメラの台数も制限がない。1000台でも管理可能だ」(戸田氏)。映像を保存するサーバーも分散設置できるため、ネットワークの負荷軽減と映像データの消失というリスク対策にもなる。多数のカメラを配置したい企業に対するソリューションと位置づけられる。

カメラにドアセンサーや水漏れセンサーなど、各種のセンサーを取り付けられることもモボティックス製品の特徴だ。来訪者の存在を自動で知らせたり、水漏れセンサーや温度センサーは、データセンターでサーバー周辺の異常を検知して警報を鳴らす仕掛けにも使える。こうした組み合わせも、ネットワークカメラの付加価値を高めていく。

PCで映像を見ることも多いネットワークカメラは、アナログカメラと比較して操作性に難があると指摘する声もある。それに応えて操作性の向上に取り組んでいるのがPSSJだ。PCを使わずに使えるレコーダーを用意し、簡単な操作を実現した。導入工事や設定を行う販売チャネル向けの施策においても、考え方は同じだ。カメラシステムを提供するには、ネットワーク機器等も含めた多様なハードウェアとソフトウェアを組み合わせる必要がある。そこでPSSJでは、「各種機器の接続、動作確認を行って、検証済みのセットを販売店に提供している」と、セキュリティ・サウンドグループ商務・ISPチーム主事の荊尾健二氏は話す。販売代理店が扱いやすい商材とする仕掛けだ。

以上、ネットワークカメラの製品トレンドを見てきた。ベンダーやユーザーもまだ気づいていない課題、ニーズを見いだしながら、“アナログカメラのリプレース”にとどまらない成長を続けていくことになりそうだ。

月刊テレコミュニケーション2013年2月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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