ジュニパーネットワークスがSDN（Software Defined Network）戦略を説明する記者会見を2013年2月15日に開いた。同社は今年1月、米ラスベガスで開催した「年次グローバル・パートナー・コンファレンス」において、SDNに移行するためのビジョンを発表している。今回の記者会見では、その概要を米本社SDNソリューション リード・アーキテクトのジェームス・ケリー氏が紹介した。

ケリー氏はSDN戦略を発表した理由について、「SDNは非常に大きな潜在力を備えているが、われわれは急いで進めていこうとは考えていない。しかし、明確にビジョンを打ち出していくことは必要だと考えた」と語っている。すでに多数の顧客を抱えるネットワーク機器ベンダーらしい物言いと言えるだろう。

ネットワークを4つのプレーンに分離

さて、ジュニパーのSDN戦略は、6つの主要原則と4つのステップ、そして1つのライセンスモデルから構成されている。「6-4-1戦略」と同社では言っているという。

ジュニパーのSDN戦略

SDNについては「ソフトウェアから柔軟に制御できるネットワーク」という共通認識はあるものの、その実現方法や用いる技術などの詳細な定義は個々のベンダーによってバラバラというのも実状である。6つの主要原則は、ジュニパーがこれからどういう方針のもと、SDNを実現していくかを述べたものだ。下のスライドが、その6つの主要原則である。

ジュニパーのSDN戦略における6つの主要原則

ケリー氏が「これこそがジュニパーの差別化要素であり、皆さんが他社で聞いたきたSDNとは異なる部分」と紹介したのは、1番目の原則である「Separate：ネットワーキング・ソフトウェアの明確な区分」である。同社のSDNでは、「フォワーディング」「サービス」「コントロール」「マネジメント」の4つのプレーンにネットワーキング・ソフトウェアを分離するという。

ここでいう「サービス」とはセキュリティやロードバランシング、DPIなど、フォワーディング以外のネットワーク機能のことだ。そして「コントロール」はネットワークの動的な状態の管理、「マネジメント」はネットワークの設定やプロビジョニング、分析などの役割を指している。これら4つの役割を明確に分離することで、高い柔軟性やスケーラビリティ、相互接続性などが実現できるという。

また、データセンターだけではなく、企業や通信事業者などの広範なネットワークを対象にしている点も、ジュニパーのSDNの特徴として説明された。

SDNコントローラーを2014年に提供

ジュニパーではこのSDNを次の4つのステップで進めていく。ステップ1は「管理の集中化」である。Junos Spaceアプリケーションからシングルポイントで、すべてのネットワーク機器を集中管理できるようにするという。

ステップ2は「ネットワーキングおよびセキュリティ・サービスのハードウェアからの抽出」。x86サーバー上の仮想マシンで、ネットワークとセキュリティのサービスを個別に拡張できるようにする。2013年第1四半期に提供予定のJunosV App Engineにより実現できるという。

ステップ3は「コントローラーの集中化」だ。ジュニパーでは、ネットワークトラフィックのフローの中にセキュリティなどのサービスをソフトウェアで仮想的に挿入する機能を「SDN Service Chaining」と呼んでおり、これを可能にするコントローラー機能を2014年中に提供する予定である。最近買収したContrail Systems社のSDNコントローラー技術がベースになるという。

最後のステップ4は「ネットワークおよびセキュリティ・ハードウェアの最適化」で、これは従来からの継続的な取り組みと言えるものだ。

SDNの提供にあたっては、ライセンスモデルも新たなものを用意する。「従来型のライセンスモデルは、ソフトウェアとハードウェアをバンドルするアプライアンス指向だった。しかし、新しいライセンスモデルでは、ソフトウェアをハードウェアから切り離すことによって、顧客に高い柔軟性や弾力性を提供する」とケリー氏。新しいライセンスモデル「Juniper Software Advantage」では、ソフトウェアを単体で購入し、同じライセンスでジュニパー製ハードウェアからx86サーバーに移行することも可能になっている。