クラウドPBXの最新動向を探る「コールセンターから、いざ一般オフィスへ!」

クラウドPBXサービスは従来、コールセンター中心に導入が進んできたが、いよいよ一般オフィスへの展開にもベンダー各社の力が入ってきた。参入プレーヤーも増えてきたクラウドPBXベンダー各社の戦略を探った。

「“クラウドPBX”は、ユーザーの関心も高まっており、参入プレーヤーも増えてきているので、2013年には一般的なサービスになっていきそうだ」。クラウドPBXの草分け的なサービスである「BIZTEL ビジネスフォン」を提供しているリンク・BIZTEL事業部長の坂元剛氏はこう語る。同社には現在、毎月100件程度の問い合わせがあり、クラウドPBXサービスの将来性に手応えを感じているという。

オンプレミス型としてユーザー企業内に設置していたPBX/ビジネスホンをなくし、ベンダーのデータセンター内のサーバーから、ネットワークを介してPBX機能(外線発着信、内線通話、保留転送など)をサービスとして提供する「クラウドPBX」は、2006年頃から登場している。

これまでは、クラウドPBXに関する正確な情報が周知されていないこともあってユーザーが信頼性を危惧したり、通信系ディーラーが既存ビジネスへの影響を恐れて重い腰を上げない状況も手伝って、まだまだ「市場」を形成する規模には至っていない。データを外部に預ける「クラウド」へのセキュリティ不安も普及を足止めしていた大きな要因だ。

だが、2011年3月11日の東日本大震災を境に、BCPの観点から「データは外に預けたほうがより安全」というように、堅牢なデータセンター内の設備を利用することのメリットが広く認識され始めた。従来からの初期投資の抑制や迅速な導入といった特徴も手伝ってユーザーの意識が変わり、ICTの利用形態のクラウド化への流れが加速化した。

このような状況はPBX/ビジネスホン市場でも無視できないほどの影響を与え始めており、クラウドPBXサービスの普及に向けて追い風となっている。

こうした状況下で、2011年11月にOKIとOKIウィンテックがPBX/ビジネスホンメーカーの先陣を切って「EXaaS 音声クラウドサービス」を市場投入。2012年に入ってからは、KDDIが「KDDI 仮想PBXサービス」、NTTドコモが「オフィスリンク(仮想PBXタイプ)」というように、携帯キャリアも力を入れ始めた。さらに、2011年以降、新規ベンダーによるサービス投入も相次いでいる。

最短5営業日で利用可能! 迅速導入がメリット

現在、一般的なオフィスに比べてクラウド化が進んでいるのは、コールセンターだ。リンクのBIZTELはこれまで、コールセンター向けだけで200社以上の導入実績がある。フュージョン・コミュニケーションズの「FUSION Connect」もコールセンターがメインターゲットであり、同じく約200社へ導入したという。

クラウドPBXの優位性が発揮できる例がある。この年末に衆議院議員総選挙が行われたばかりだが、選挙事務所には支援者や有権者からの問い合わせ用電話設備が必須だ。ただし、利用期間が限定されており、かつ1日でも早い導入が求められる。

例えばリンクのBIZTELは、最短5営業日で利用できる。また、フュージョンのFUSION Connectは、1カ月単位での利用が可能で、最少2席から対応している。このように短期間だけ使いたい、迅速に導入したいというニーズを満たせるのが、クラウドの大きなメリットだ。

ただ、今後クラウドPBXが普及し、市場を形成していくには、やはり一般オフィスへの導入は欠かせない。オフィスへの導入が進まない理由としてはまず、前述のように、これまで電話システムの販売・構築、サポートを担ってきた通信系ディーラーが既存ビジネスへの侵食を恐れて取り扱わないということが挙げられる。

クラウドPBXでも、導入に当たってはユーザー企業の要望に合わせた設定や工事が伴うケースも少なくない。例えば、企業にとって代表電話番号等、従来の0AB~J番号を継続利用できることは大事なポイントだが、クラウドPBXでこれを実現するには、ユーザーの拠点側に外線接続のためのボイスゲートウェイを設置する必要がある。その工事には通信系の技術が求められるが、現在クラウドPBXベンダー各社は直販部隊もしくはグループ会社で行うか、NTTドコモのように「当社で指定する工事会社に対応してもらっている」(第一法人営業部法人サービス推進第二・第一担当課長の奥泉剛氏)という方法をとっている。

また、クラウドPBXサービスの販売は、単に通信工事ができればよいというわけではなく、販売ノウハウも必要となるため、ベンダー各社はまず直販でノウハウを構築してからチャネル販売を検討するというスタンスであり、具体的なチャネル施策は今後の検討課題としている。

月刊テレコミュニケーション2013年1月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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