生成AI等の利活用拡大に伴い、データセンター(DC)の電力需要は急増する見込みだが、脱炭素の観点で、再生可能エネルギー等を活用した電力供給が求められている。また、AI用DCの建設計画が集中する東京や大阪などの大都市圏では、DC用の適地不足が顕在化しつつある。
こうした電力インフラと通信インフラの課題解決を目指しているのが、「ワット・ビット連携」だ。国家戦略「GX2040ビジョン」では、「電力と通信の効果的な連携(ワット・ビット連携)により、AIを通したDXを加速させ、成長と脱炭素の同時実現を目指すGXの効果を最大化させていく」と記載されている。
ただ、ワット・ビット連携の実現に向けては、「地理的・時間的不均衡を解消する必要がある」。2025年3月25日に開催されたメディア意見交換会にて、三菱総合研究所(MRI) 政策・経済センター 主席研究員 研究提言チーフの西角直樹氏はこう指摘した。DCは大都市圏に集中する一方、脱炭素電源は地方に分散している。また、再エネの発電ピークは日中だが、DCは24時間365日の稼働が要求される。
ワット・ビット連携上の課題:地理的・時間的不均衡
この地理的・時間的不均衡を解消し、「電力インフラと情報通信インフラの最適化のカギとなるのが、DCの地域分散化」(西角氏)だ。具体的には、脱炭素電源近傍のDCへデータを移転・処理する、地域内でデータと電力を“地産地消”するといった方法があるという。
DC地域分散でデータと電力の地理的不均衡を解消
同氏によると、生成AIの学習等の“移動可能”な計算需要は、「遅延許容性は高めで、東京・大阪以外でも処理可能」。エッジ処理が不可欠な自動運転等の“移動困難”な計算需要は、「超低遅延性が必要で、地域内処理が効果的」だ。