スマートホームの国際標準規格「Matter1.0」のリリースから約2年が経過した。Matterとは、メーカーやプラットフォームが異なるデバイス間の相互運用性の確保を目的に、無線通信規格の標準化団体であるCSA(Connectivity Standards Alliance)によって策定された規格だ。Matterに準拠した家電製品であれば、Amazon AlexaやGoogle Home、Apple HomeKitなどのプラットフォームで操作可能だ。
AmazonやGoogle、Appleなどの巨大プラットフォーマーがスマートホーム市場を牽引する欧米では、Matterの普及が進んでいる。昨年5月に設立されたCSA日本支部で代表を務めるX-HEMISTRY CEOの新貝文将氏によると、北米に1000店舗以上を構える家電小売大手のBest Buyは、ほとんどの店舗の入り口付近にMatterを含めたスマートホーム関連売り場を配置しているそうだ。
Connectivity Standards Alliance(CSA)日本支部 代表 新貝文将氏(X-HEMISTRY CEO)
一方、国内の状況は違う。「Matterというキーワードは少しずつ浸透し始めているものの、実際に利用するコンシューマーの方にはまだまだ届け切れていない。このまま行くと、日本はスマートホームでもガラパゴスになってしまう」(新貝氏)。こうした危機感からCSA日本支部を設立したという。
Matterの登場当初、CSAに参画する日本企業の数は1桁台だったが、今では30社まで拡大した。スマートホーム事業立ち上げ等のコンサルティングを行うX-HEMISTRYへの問い合わせも増えているという。例えば、「通信事業者が次の事業の柱を作ろうとする中で、スマートホームに焦点を当てている」。
この勢いを加速させ、日本のスマートホーム市場を活性化させることがCSA日本支部の目的だ。
「日本は製造業が強い国だが、スマートホームについては遅れている。Matterは、モノづくりは得意だが、クラウドの運営やアプリ開発は苦手だという企業にとっても、IoT製品が作りやすい仕組みだ。『製品を作って売れればいい』ということであれば、クラウドやアプリはAmazonやGoogle、Appleに任せられる。Matterの認知度を高めることで、日本企業のスマートホーム製品も増えていくと考えている」と新貝氏は持論を展開する。