――川上社長はNECで主にキャリア向けの事業を担当されてきたのですね。
川上 もともとは局用交換機の事業部にいました。NECはNTT向けと海外キャリア向けの2機種を持っており、このうち海外向けの交換機をNCCにも展開することになり、KDDIや日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)などに導入することができました。その流れでNTTドコモにも採用され、そちらを担当していたことで、局用交換機の事業部が固定とモバイルに分かれた際に、私はモバイル側に移ったのです。
――固定と移動の両方を長年、経験されてきたわけですね。今の通信機器市場をどう見ていますか。
川上 私が長く担当していた局用交換機は、2001年に開始されたマイラインの頃が最後のピークで、現在はほとんど出荷されていません。私も携わっていたデジタル交換機「NEAX61Σ」は、今はもうありません。PSTNによる電話サービスも、いずれはすべてIP電話サービスに移行し、なくなるでしょう。
当社は企業ネットワーク向けにIP-PBX/ビジネスホンを生産していますが、この先も永遠に需要が続くという保証はないわけです。
ユーザーに目を移すと、メールやSNS等のさまざまなコミュニケーションツールを活用しており、電話だけには頼っていません。電話はすでに、コミュニケーションツールの1つになっています。このため、PBXやビジネスホンだけをお客様に提案しても、誰も相手にしてくれないところまで来ていると思います。
――確かに、PBX/ビジネスホンを単体で見ると市場は今後大きく伸びることはないでしょうし、より高機能の製品を出せば受け容れられるという局面ではなくなっていますね。
川上 NEAX61Σは1995年に市場投入しましたが、機能追加をしようにもIP化への流れのなかで需要は減少し、結局「最後の局用交換機」になってしまいました。同様のことはPBX/ビジネスホン市場でも起こることでしょう。
ですから、提案にはプラスアルファが必要で、お客様が本当に欲しているものは何かということをきちんと把握し、トータルコミュニケーションという形で提供していかなければならないと思います。
もちろん、我々自身ですべてはできませんので、さまざまなパートナーとアライアンスを組んでいかなければなりません。
ただし、そのなかで我々が何をすべきかを明確にする必要があります。当社には「UNIVERGE SVシリーズ」と「UNIVERGE Aspire X」がありますので、これらをコアにして、パートナーの製品群と組み合わせてソリューションとして提供できるような形でレベルアップさせていかなければならないと思っています。