KDDIとAIスタートアップのELYZAが資本業務提携、業界・企業特化型LLMを開発へ

NTT、ソフトバンクが自社でLLMを開発するなか、KDDIが選んだのはAIスタートアップELYZAとの提携だった。1000億円を投じて計算基盤を構築するほか、KDDIグループのアセットを活用してELYZAの法人営業やアプリケーション開発を支援。業界や企業に特化したLLMも開発し、生成AIの社会実装を進めるという。

KDDI、KDDI Digital Divergence Holdings、ELYZAの3社は2024年3月18日、資本業務提携を締結したと発表した。

ELYZAは、東京大学 松尾研究室からスピンアウトしたAIスタートアップ。生成AIの中核技術であるLLM(大規模言語モデル)の研究開発および社会実装に取り組んでいる。

4月1日を目途に、KDDIは43.4%、KDDI Digital Divergenceは10.0%のELYZAの株式を保有する。ELYZAはKDDIの連結子会社となり、KDDIグループの支援を受けながら、将来的なスイングバイIPOを目指す。

ELYZAはスイングバイIPOを目指す

ELYZAはスイングバイIPOを目指す

スイングバイとは宇宙の専門用語で、宇宙探査機が惑星の重力を利用して加速することを意味する。KDDIでは、スタートアップが同社のサポートを得て成長し上場を目指すことを、スイングバイIPOと呼んでいる。このスイングバイIPOの代表例がソラコムだ。2017年にKDDIグループ入りしてから、新たなIoT創出やグローバル展開の加速により、IoTプラットフォームの回線数は800万回線まで拡大。今月26日に、グロース市場への上場を予定している。

ソラコムはスイングバイIPOの代表例だ

ソラコムはスイングバイIPOの代表例だ

「スイングバイIPOを目指すスタートアップを支援する取り組みを、生成AI領域でもスタートさせる」とKDDIの髙橋誠社長は語った。

KDDI 髙橋誠社長

KDDI 髙橋誠社長

ELYZAは2019年からLLMの研究開発を開始、これまでにIBMのwatsonxやKPMGをはじめとする様々な企業の業務や大学の研究開発などに活用されている。

LLMの開発には事前学習と事後学習が必要になるが、ELYZAでは、コストと時間のかかる事前学習については「Llama 2」シリーズなどオープンなモデルを採用し、日本語に特化した学習に重点を置くことで、直近では700億パラメーターの日本語LLMを開発した。

追加事前学習と事後学習に重点を置いている

追加事前学習と事後学習に重点を置いている

ELYZAのLLMモデルは、国内プレイヤーで唯一グローバルプレイヤーのモデルと同水準の精度を達成しているという。

グローバルプレイヤーのモデルと同水準の精度を達成

グローバルプレイヤーのモデルと同水準の精度を達成

今春からは、LLM活用の新たな選択肢として、LLMのAPIを順次提供開始する予定だ。すでにOpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなどが提供しており、国内プレイヤーとして初めて参入する。

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