聖学院大学(埼玉県上尾市)は、数年前から構内の無線LAN環境の整備を進めている。特徴的なのは、屋内外を問わず教職員や学生がいつでもどこでも校内LANやインターネットにアクセスできる環境を目指していることだ。
その第一の目的は、授業の自由度の向上にある。「特定のPC教室に限定せず、学内全域でどこでも無線LANが利用できるようにしたい。そうすれば、もっと柔軟に授業でモバイル端末が使える」と、総務部情報推進課の清水佳人氏は話す。
聖学院大学 総務部 情報推進課 清水佳人氏 |
授業の自由度を高める
同大学は少人数教育を基本コンセプトとしている。大多数の講義が50人以下で行われ、教員との距離が非常に身近な数人から10人程度の授業も多い。一方通行の大講義ではなく、学生と教員が意見を交換したり、発表の場を多く持つディスカッション形式の授業を頻繁に行っている。
無線LANのニーズは、そうした教育方針が背景になっている。学生と教員で資料データを共有したり、ノートPCやモバイル端末からインターネットで情報を検索・調査したりと、授業でもネットワークは不可欠だ。iPadで資料を閲覧する光景も今や珍しいものではなくなった。
いわゆる「PC教室」は以前から設置されていたが、有線LANで机もPCも固定されていたため、少人数のディスカッション形式の授業には適さなかった。柔軟な授業を行うには、無線LANが使えて、机と椅子も移動できるような環境が望まれる。しかも、教員・学生共にノートPCやタブレット、スマートフォン等を活用する時代になった。
PC教室ではなく普通の教室で、多彩なモバイル端末を活用しながら自由度の高い授業を行いたい――。そうした需要に応えるために無線LAN整備の計画がスタートした。もちろん、授業外でも、教職員や学生がいつでもどこでも必要な情報にアクセスできるようにすることで、業務および学習の効率アップも期待できる。
聖学院大学のキャンパス |
BelAir 3基で一気に“面”展開
通常であれば、教室や食堂などの共有スペースにアクセスポイント(AP)を設置していくというのが無線LAN整備のセオリーだろう。だが、聖学院大学が選んだのは、屋外用無線LANで構内を広くカバーする方法だ。昨年、ソネット(東京都墨田区)が取り扱うメッシュネットワークにも対応した加BelAir Networks社のWiFi無線装置「BelAir」の存在を知ったのがきっかけだった。
もともと無線LAN整備計画では屋外も重要なポイントだった。児童学科や人間福祉学科などで、屋外での実習形式の授業を行っており、そうした場面でもスマートフォンやタブレット端末等を活用するためだ。高校生が大学を見学し雰囲気を体験するオープンキャンパスでも、モバイルを活用した先進的な取り組みを通じて魅力をアピールできる。
また、コスト面のメリットも大きい。屋内にAPを設置する場合、機器代はもちろん、APまでの有線LAN敷設工事費が嵩む。授業のない休暇中にしか工事が行えないのも問題だ。
情報推進課が注目したBelAir 100は、2.4GHz帯の電波を使用し、1台で直径600mをカバーする屋外用WiFi装置。6月にこれを3基導入して構内の主要エリアをカバーした。