携帯電話網を災害、事故等の発生時の情報共有手段として用いる検討が、総務省を中心に進められてきたが、2024年の実用化に向け最終コーナーを回った。これまでの公共安全LTE(PS-LTE)という呼称は、5GNSAエリアの拡大に鑑み、より一般的な「公共安全モバイルシステム」に2023年12月5日をもって変更された。
「この名称変更は、5G、6G以降の展開を見据えたもの」と総務省 総合通信基盤局 電波部 基幹・衛星移動通信課 重要無線室 課長補佐の山本直紀氏は説明する。
総務省 総合通信基盤局 電波部 基幹・衛星移動通信課 重要無線室 課長補佐 山本直紀氏
従来、警察や消防、自衛隊といった公共機関は、有事の連絡に各機関が独自に整備した無線システムを用いていた。ただ、組織を横断した情報共有がしづらく、維持管理費用や先端技術の導入といった面でも問題を抱えていた。
近年、豪雨災害をはじめとして災害が広域化しており、「1人でも多くの人の命を救うためには、災害対策本部を経由するのではなく、現場レベルで直接共有することが必要だ」(山本氏)。そして、音声通話だけでなく画像や動画、テキストメッセージなど多様なメディアを利用できることが迅速かつ正確な情報共有に役立つことは言うまでもない。
既存の携帯電話網と市販のスマホ等を活用する公共安全モバイルシステムは、こうした要請に応える。
このような携帯電話網の公共安全目的への活用は、諸外国ですでに行われている。米国では「FirstNet」の名称で2018年に運用が始まり、警察、消防から医療、交通にわたる各機関の約400万人に利用されている。