NTTは2024年1月18日、IOWN Global Forumでアーキテクチャ検討を行っているIOWN オールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network、以下APN)を5G Radio Access Network(RAN)基地局のアンテナ側装置(Radio Unit/RU)と制御側装置(Distributed Unit/DU)と間のモバイルフロントホールに適用できることをノキアと共同で実証したと発表した。実証実験では、RUとDU間の距離が25kmとなる場合においても、IOWN APNを用いた低遅延伝送によりモバイルフロントホールにおける標準規定を満たし、5GのRUとDUが正常に動作することを確認した。今回の成果により、RUとDU間を長距離伝送し広範囲での基地局運用を可能とすることで、DU数の削減および、その電力消費の低減に貢献するという。
5Gや6Gでは、4Gまでと比べて高い周波数帯を使用することから同じ面積のエリアをカバーするため多くの基地局が必要となり、基地局の数の増加と、それに伴う消費電力の増大が課題となっている。
これまで、基地局のRUとDUを分け、DUを集約することでこの課題に対処してきた。IOWN Global Forumの調査ではRUとDUの間の距離は7km以下が多いと報告されており、広範囲に存在する多数のRUが1つのDUに十分に集約できていないという実態がある。
従来、RUとDUの間のモバイルフロントホールには1対1で固定的に光ファイバーを接続する形態(ダークファイバー)が主流となっていたが、この場合、RUが特定のDUと1対1に接続される形態となり、障害時には、RUでカバーしているエリアのサービスに影響を及ぼす。
IOWN APNによって、RUとDU間の経路の動的な変更が可能となる。RUとDU間の障害時においても、IOWN APNであれば障害部分を動的に迂回させることでRUがカバーしているエリアのサービス継続が可能だ。現在モバイルフロントホールには業界標準として遅延時間160μsec以下という厳しい規定があり、5GのRUとDUはこの規定に基づき動作するように作られている。
モバイルフロントホールと遅延要件
実証実験では、5GのRUとDU間をIOWN APNによって接続し、長距離伝送においても5GのRUとDUがデータ転送を含めて正常に動作することを検証した。検証においては、IOWN APN機器構成や伝送方式など、IOWN Global Forum のIOWN for mobile networkのProof of Concept(PoC)Referenceに準拠のうえ実施。また、様々なAPN機器の導入形態を想定し、長距離伝送を行うAPN機器区間(APN-TとAPN-Gの間、APN-GとAPN-Iの間など)の距離を変えた検証も行った。
その結果、様々なIOWN APN機器の導入形態において、伝送距離25kmの環境でRUとDUが正常に動作し、データ転送時の速度やロス率などの通信の品質にも影響がないこと、遅延時間が133μsecであることを確認した。また、遅延時間が133μsecであることから、最大距離約30kmまで長距離伝送が可能であることも机上にて確認したという。
実証検証における構成と結果
今回の実証実験により、IOWN APNを用いることでRUとDUの距離を延長しても5GのRUとDUが正常に動作することを示した。今後は、RUとDU間での障害発生を模擬し、その環境下でもIOWN APNの動的な経路の変更により安定したモバイル通信サービスが継続できるかという実証実験に取り組み、強靭なネットワークの実現を目指す。また、日中と夜間のユーザー数やトラフィック量の変動に応じて、RUが接続するDUをIOWN APNを用いて動的に切り替えることにより、電力効率の高いモバイルネットワークの実証実験にも取り組むとしている。