「NTTと日本発のAIを広めていく」 45億円調達のSAKANA AIが目指すもの

2023年1月16日に、日米のベンチャーキャピタルから約45億円を調達したことを発表したSAKANA AI。次世代生成AI基盤モデルの開発を目指す同社は1月17日、日本で筆頭株主となるNTTと共同会見を行った。今回の出資を契機に、AIコンステレーション研究における連携を深める。

「AIコンステレーション」とは、小規模なAIモデルが多数つながり合い、集合体として動作するアーキテクチャのことだ。

NTTとSAKANA AIは2023年11月に、このAIコンステレーション研究で連携協定を締結。今回の出資は連携をさらに深め、新たな生成AI基盤モデル開発を加速させるのが狙いである。

従来のLLMとAIコンステレーション

従来のLLMとAIコンステレーション

一般的な大規模言語モデル(LLM)開発と何が違うのか。SAKANA AIでCOO(最高執行責任者)を務める伊藤錬氏はまず、現在のLLM開発の課題を次のように説明した。

「現在のモデルの作り方は、インプットの量とアウトプットの性能が正比例の関係になっている。たくさんのお金、時間を投じるほど良いものが作れるので、必然的にお金を使う競争になってしまう」

生成AIは社会を変革するほどの力を持つが、開発資金も労力も、さらには電力も際限なく増大することは避けなければならない。伊藤氏は「この問題をどう解決するかがSAKANA AIの原点」と説明。具体的には、すでに存在している多数の小型AIを効率的に連携させるためのエージェントを設計することで、「正比例の関係を壊したい」と話した。

会見に参加したNTT、NDV、SAKANA AIのメンバー

(左から)NTT執行役員 研究企画部門長の木下真吾氏、SAKANA AI 共同創業者のデビッド・ハー氏(CEO)、リオン・ジョーンズ氏、伊藤錬氏(COO)、NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長の安元淳氏

NTTグループが日本の筆頭株主に

グーグル出身のAI研究者であるデビッド・ハー氏とリオン・ジョーンズ氏が2023年8月に東京で設立したSAKANA AIが資金調達を実施するのは、今回が初めてだ。NTTグループを代表して出資を行ったNTTドコモ・ベンチャーズによれば、約45億円という額は、日本のスタートアップの初回調達額としては過去最大級。NTTグループは日本における筆頭株主となる。

NTTドコモ・ベンチャーズの安元淳社長は、NTTが生成AI開発で注力する3領域を挙げたうえで、SAKANA AIとのシナジーの大きさを強調した。

NTTとNTTドコモの投資領域

NTTとNTTドコモの投資領域

注力領域の1つめは「業界特化型および汎用型のAIアプリケーション」、2つめは「AI性能を高める技術」だ。様々なAIモデルを連携させ、AIの性能を高めようとするAIコンステレーションの考え方は、それを体現するものとなる。

さらに、3つめに挙げたのは「これまでにない新たなアプローチの生成AI基盤モデル」であり、まさにSAKANA AIの理念に合致する。

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