IoTの普及やDX化の広がりによってデータ量が増大し、また生成AIが日進月歩で進化を続けるなか、企業には、これら先端技術を活用していかに差別化を図るかが問われている。求められるのが、これまで以上のコンピューティングリソースと、それを超高速ネットワークを介して活用できる環境だ。
データセンター(DC)事業者にとってこのトレンドは大きなビジネスチャンスとなるが、同時に深刻な課題も浮上する。消費電力量の増大だ。
ある調査によれば、世界におけるDCのエネルギー消費量は、2030年までに現在の約10倍に達するという。いかにしてこれを抑え込むかが、DC事業者にとって最重要課題だ。
日本政府はグリーン成長戦略の一環として、改正省エネ法を施行。国内DCに対して、2030年までにPUE(電力使用効率)を1.4以下にするという目標値を設定した。これをクリアするため、水冷式設備の導入やAIを用いた空調の自動調整など様々なアプローチが取られているが、2021年度時点で国内のPUE平均は1.7。達成は遠い。
ところが、実はこのDCグリーン化には意外な盲点がある。「時刻同期」を活用して、コンピューティングのアイドル時間を短縮し、その分の電力を削減しようというアイデアだ。実際に米Metaなどが主導して実証が行われており、一定の成果を確認している。
使用するのは、マイクロ秒レベルの高精度な時刻同期を可能にするPTP(Precision Time Protocol)技術だ。これ単体で大幅な削減効果が見込めるわけではないが、考えられる限り省電力対策は打ったうえでの“あと一押し”として期待できる。その仕組みとは、どのようなものだろうか。