NTT、6G/IOWN時代のコアネットワークの基本技術仕様を確立 より快適・安全な体験へ

NTTは2023年10月25日、6G/IOWN時代のコアネットワーク「インクルーシブコア」アーキテクチャについて基本技術仕様を確立し、メタバースをユースケースとした実証実験を実施し、その有効性を確認したと発表した。

「インクルーシブコア」概要

「インクルーシブコア」概要

6G/IOWNの時代では、サイバー空間と物理空間、コンピューティングとネットワーク、アナログとデジタル、移動通信と固定通信など、通信サービスそのもの、あるいは環境変化としてこうした面の「融合と協調」が進むことが予想される。この融合と協調を実現する共通的基盤がインクルーシブコアだ。

インクルーシブコアは、「ネットワーク融合サービス高速処理基盤(ISAP)」「耐障害性の高いネットワーク技術(ロバストネットワーク)」「アプリケーション要件に適応した通信方式の選択機能(適応トランスポート)」「モノ、AIなどの多様な対象の認証機能と端末、ネットワーク、サービス間のID連携機能(認証・ID連携機能)」「ユーザ主権によるアイデンティティ管理と情報流通基盤(SSI基盤)」などの要素技術から構成される。

今回の実証実験では、コンピューティングとネットワークの融合と協調という観点から、「In-Network Computing」や「SSI(Self-sovereign identity:自己主権型アイデンティティ)」という萌芽的技術コンセプトを取り入れたコアネットワークを構成し、ISAPとSSI基盤についてアーキテクチャの実証を行った。なお、In-Network Computingとは、アプリケーションレイヤーの処理機能をネットワーク内のデータ転送機能に移譲し、遅延や端末の消費電力を低減しつつ、高性能・高機能なサービスを実現する技術コンセプト。

具体的には、AWS上にインクルーシブコアを実装し、メタバースをユースケースとした2つの実証を行った。

1つは、「メタバース空間状態と連動したIn-Network Computing基盤によるメタバース空間描画の起動・高速化の実証」だ。

メタバース空間状態と連動したIn-Network Computing基盤によるメタバース空間描画の起動・高速化の実証

メタバース空間状態と連動したIn-Network Computing基盤によるメタバース空間描画の起動・高速化の実証

NTTドコモが提供するメタバース「MetaMe」から移動できる空間(MetaMeコミュニティワールド)として接続した後述するSSIに基づくメタバースへの移動に合わせて、AWS上に展開された5Gコアネットワークの端末接続状態をISAPが連携し、ネットワーク内のハードウェアアクセラレータに動的にメタバース空間描画機能を起動することによる、高速な3D空間描画を実証で確認したという。

ISAPはIn-Network Computingにより、端末とクラウドでのサービスに係る情報処理を仲立ちし、通信環境やサービス利用環境に即したネットワーク内のハードウェアでの連鎖的な処理基盤を形成する。これにより、端末とクラウドの情報処理をネットワークが協調し高速化させるため、ユーザー環境や端末などの制限を受けずに高度なサービスを快適に利用できるという。

もう1つは、「個人のプライバシー情報を収集しないパーソナライズされたコンテンツ配信を可能とするSSIに基づくメタバースの実証」だ。

個人のプライバシー情報を収集しないパーソナライズされたコンテンツ配信を可能とするSSIに基づくメタバースの実証

個人のプライバシー情報を収集しないパーソナライズされたコンテンツ配信を可能とするSSIに基づくメタバースの実証

ISAP上に構築したSSI基盤上に個人のプライバシー情報を管理するセキュアIDウォレットを展開。SSI基盤は、ブロックチェーンを含むSSIを実現する技術であるDID(Decentralized Identifiers:分散型識別子)やVC(Verifiable Credentials:検証可能な資格証明)と、IPアドレスなどのユーザを識別できる情報を隠蔽する技術を組み合わせた。

これにより、セキュアIDウォレットがプライバシーに配慮して個人の属性情報を提示し、メタバース空間上で個人の特定につながる個人情報の収集を防ぎながら、属性情報に基づいたパーソナライズされたサービスの提供を確認できたとしている。

今後、こうした要素技術を国際的な標準化団体やオープンソースコミュニティに提案し、6G/IOWNの本格導入が予定されている2030年に標準仕様として社会実装されることを目指すという。

この技術仕様についてはホワイトペーパーを公開するとともに、実証実験の成果が2023年11月14日~17日に開催の「NTT R&D フォーラム― IOWN ACCELERATION」に展示される予定だ。

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