「イノベーションを引き起こせ」。多くの経営者が社員にこう檄を飛ばすが、そもそも簡単には起こらないのがイノベーションである。一体どうすればイノベーションが生まれやすい組織は作れるのだろうか。シスコシステムズの石原洋介氏がUCサミット2011で示した解答は次の通りだ。

「誰かがパッと思い付いたひらめきを、社内外のいろいろな専門家たちとの共同作業を通じて、お金を生むサービスや商品に変換していく――。そうした組織モデルを作るうえで考えなければならないのがワークスタイルだ。バーチャルワークスペース上で、いつでもどこでもコラボレーションできる人中心の働き方が、イノベーションにつながっていく」

シスコシステムズ コラボレーション事業　ユニファイドコミュニケーション シニアセールススペシャリスト 石原洋介氏

シスコの言うバーチャルワークスペースとは、「PCやスマートフォン／タブレットなどのあらゆるデバイスから、いつでもどこでも同じ生産性で同じ情報にアクセスでき、同じ応答性が得られる環境」のことだ。ユニファイドコミュニケーション（UC）、VPN、スマートフォン／タブレット等のスマートデバイス、システムのデータセンターへの集約などによって、このバーチャルワークスペースは実現される。

従来のオフィス中心の働き方では、会社に出社しなければチームメンバーとの共同作業や、業務に必要な情報へのアクセスなどがままならなかった。しかし、バーチャルワークスペースを構築すれば、自宅や客先、移動中の社内など、「自分が今いる場所」が最適な仕事環境となる。自分や相手の居場所にかかわらず、「ちょっと相談したいんだけど」と様々な専門家の力を引き出すことが可能になり、例えば顧客に近いところで意思決定できるようになる。これがシスコが考える人中心の働き方だ。

会場ではその具体的な活用シーンとして、オフィス移転プロジェクトを任された石原氏が、大阪にいる社内デザイナーに新オフィスのデザインについて相談するというシチュエーションのデモが実施された。このデモのポイントはまず、コラボレーションディレクトリという社内の専門家を検索するためのツールだ。これは、相手のことを直接知らなくても、組織名や役職、スキルなどから、社内の適切な専門家を検索できるWeb電話帳である。コラボレーションディレクトリからデザイナーを見つけた石原氏はビジネスチャットで相手のプレゼンスを確認したうえで、「相談に乗ってもらえますか」とテキストメッセージを送信。相手の了承を得ると、Web会議をワンクリックで立ち上げ、資料共有しながらの打ち合わせを行ってみせた。

専門家とのコラボレーションのデモの様子。Web会議により資料共有しながら打ち合わせ

デモのもう1つのポイントは、マルチデバイス対応である。自宅や外出先など、いつでもどこでもコラボレーションを行うには、PCに対応しているだけでは十分ではない。スマートフォンやタブレットなど、さまざまなデバイスへの対応が必要だ。デモでは、Windows PCだけでなく、Mac、iPhone/iPad、Android、BlackBerryといったデバイスで、コラボレーションディレクトリやビジネスチャット、Web会議による資料共有などが活用できることが強調された。

この専門家とのコラボレーションのデモとは別に、「どこでもビデオ」の実演も行われた。テレビ会議専用端末のほか、シスコのAndroid搭載ビジネスタブレット「Cisco Cius」やPCなどのデバイスを使って、いつでもどこでもさまざまな端末からビデオ会議に参加できることが示された。なお、Ciusはビデオ会議端末、電話端末、シンクライアント端末、そして通常のAndroid端末としての機能を1つに集約したもの。「社内も社外も家も、1つの端末に統合できるのがCius」（石原氏）だという。

Android搭載のビジネスタブレット「Cisco Cius」。1台でビデオ会議端末、IP電話端末、シンクライアント端末などの役割をこなせる