NTTドコモのオープンRAN世界展開は第2幕へ 導入支援「OREX」の狙いとは

海外キャリアに最適なオープンRANを提供することを目的に掲げ、2021年2月に「5GオープンRANエコシステム」を設立したNTTドコモ。2023年2月に「OREX」というOpen RANサービスブランドを立ち上げた。OREXエバンジェリストの安部田貞行氏に、パートナーの一員であるウインドリバーの庄納崇氏がその狙いと展望を聞いた。

庄納崇氏(ウインドリバー 執行役員 通信キャリア営業本部 本部長、以下「庄納」) OREC設立から2年が経ち、新たにOREXという新ブランドを発足させました。この背景について教えてください。

安部田貞行氏(NTTドコモ OREXエバンジェリスト、以下「安部田」) OREC設立以前より、5GでオープンRAN(O-RAN)を商用で、かつマルチベンダーで導入しているのはドコモくらいしかいないという状況でした。

他の海外キャリアにとっては、まだチャレンジが多いという状態であり、オープンRANをもっと簡易に使えるようにするにはどうすればいいのか、また、仮想化RAN(vRAN)を導入するにはどうすればいいのかという2つの大きな課題がありました。

これを解決するには、我々だけでなくパートナーと一緒に、しかもグローバルベンダーとともに策を考えていかなければならないということで、ORECというエコシステムを立ち上げたわけです。オープンRAN、vRANを商用化する際の課題を、各業界のリーダーである方々と議論することでイノベーションを創出することも期待できます。

NTTドコモ OREXエバンジェリストの安部田貞行氏(右)と、ウインドリバー 通信キャリア営業部 シニアディレクターの庄納崇氏

NTTドコモ OREXエバンジェリストの安部田貞行氏(右)と、ウインドリバー 執行役員 通信キャリア営業本部 本部長の庄納崇氏

まず最初に取り組んだのがvRANです。2021年当時は、既存の専用ハードウェアと比べると性能が出ないという問題がありましたが、vRANはオペレーターにとって有用なものになる可能性は十分にあり、将来的に様々なベネフィットが受けられるという確信がありました。いろいろなベンダーに声をかけてパートナーとして参加していただき、ORECをスタートしました。

それから2年、性能的にも既存の専用ハードウェアと十分に戦えるプロダクトが出てきて、商用化の目処が付き始めました。しかも、我々はマルチベンダー化を実現するための経験を積んできています。

いよいよ商用段階に来たということで、「エクスペリエンス」を加えた「OREX(Open RAN Ecosystem Experience)」という新たなサービスブランドを立ち上げ、パートナーの皆さんと一緒に海外通信キャリア向けにオープンRANを推進していこうとしているのが現在の状況です。

Open RANサービスブランド「OREX」

ドコモと多様なグローバルベンダが連携し、世界各国でのOpen RANの構築を強力に支援する、Open RANサービスブランド「OREX」(https://ssw.web.docomo.ne.jp/orex/)

実践者ドコモが考えるオープンRANの利点

庄納 オープンRANの一つの利点は、時間軸的、機能的、コスト的にその時に最適なベンダーを選択できるところにあります。この点についてどうお考えですか。

安部田 RANをマルチベンダー化しているドコモでは、新たな周波数を追加したり、新たな展開シナリオを実行する際にベストなパートナーを選択できています。「ベスト」というのはコスト面でも性能面でもそうですし、さらに時間軸で見た場合でも、必要な時期に必要な性能を提供できるパートナーを選択できる状況にあります。

従来型ネットワークの課題とオープンRANのメリット

従来型ネットワークの課題とオープンRANのメリット

メリットはそれだけではありません。昨今はかなり改善されましたが、コロナ禍ではプロダクトの供給が遅れる事態も多く発生しました。そうした状況下でも、複数ベンダーを選べるので計画通りに調達が可能です。マルチベンダー化することで、サプライチェーンリスクも軽減できる。オペレーターにとって「やりたいことができる」というのは、やはり大きなメリットですね。

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