“名門”FCNT破綻は必然か 国内スマホメーカーの落日

5月末、FCNTが経営破綻した。富士通から分離し約5年、急遽の幕引きとなった。プラットフォーマー支配と市場のグローバル化が、メーカーをふるい落としていく。日本メーカーに残された時間はあるか。

突然の発表だった。2023年5月30日、携帯電話の国内シェアで3位のFCNTが東京地裁に民事再生手続き開始の申立てを行い、即日受理された。グループ3社の負債総額は1775億円に上り、2023年6月末時点で今年最大規模の倒産となる。

この2週間前の5月15日には、京セラが個人向けの携帯電話事業から撤退することが明らかになっていた。日本のスマホメーカーの退潮の波が徐々に大きくなってきていたとはいえ、このタイミングでの経営破綻にショックを受けた人も少なくないはずだ。

FCNTのプレスリリース一覧を見ると、経営破綻発表の1週間前にはスマートフォン「arrows N」が国際的なデザイン賞を受賞したことが発表されている。また、主力機種と言える高齢者向けのらくらくスマートフォンは最新モデルが2022年2月に発売され、累計の出荷台数は700万台を超える。一部には「らくらくホンシリーズがあるからFCNTの経営は大丈夫」という見方もあったようだ。

FCNT製のスマートフォン「arrows NF-51C」(左)と「らくらくスマートフォン F-52B」

FCNT製のスマートフォン「arrows NF-51C」(左)と「らくらくスマートフォン F-52B」

FCNTをよく知る業界関係者によると、ハードウェア担当社員は経営破綻発表当日に自宅待機を命じられたとのこと。その中には、前身の富士通および、2016年に発足した富士通コネクテッドテクノロジーズ時代から在籍していた社員もいる。2010年に富士通と東芝が携帯電話事業を統合する以前からモバイル通信に携わり続けたベテランも少なくないだろう。

2018年に富士通が投資ファンドに保有株式を売却してから約5年、2021年4月に富士通グループとの資本関係を解消しFCNTとして新たなスタートを切ってから2年あまり。2023年7月時点でFCNTの携帯電話事業を引き受ける意思を表明した企業はなく、日本の名門メーカーの命脈が途絶えることになる可能性が極めて高い。

また、別の業界関係者は、今回の経営破綻の動きはあまりにも急だったため、再就職先を探す社員がFCNTからの支援を受けられていないのではないかと心配する。海外メーカーを含む同業他社や、携帯通信事業者が新天地の候補となると思われるが、タイミングを逸すると技術と経験を持つ有為な人材が業界を去ることになりかねない。

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