<特集>空と海の通信戦争海底ケーブル市場で存在感増す日本 「地球の動脈」めぐる攻防

国際通信の99%を担う海底ケーブルはここ10年、GAFAMのデータセンターを結ぶ回廊として発展してきた。そして今、揺れ動く国際情勢を反映して、市場はさらに大きく変容しようとしている。

周囲を海に囲われた日本は、エネルギーや食料等とともに情報も“海の交易路”なしには得ることができない。海底ケーブルは我が国の社会・経済活動を支える最重要基盤だ。

これはもちろん日本に限った話ではない。インターネット産業の中心地である米国もまた太平洋と大西洋に挟まれており、海底ケーブルなしにその繁栄はありえない。国際海底ケーブルはまさに地球の動脈だ。

日本はキープレイヤーの1人

現実空間とサイバー空間の境目がなくなる真のデジタル時代の到来を見据えて、海底ケーブルはまた新たな時代を迎えようとしている。

変化をもたらす要因の1つめは、伝送技術の進化だ。国際通信の回線需要は年率35%の急成長が予測されている。これに応える大容量ケーブルの建設と並行して、1本当たりの伝送容量を飛躍的に増大させる新技術の導入が始まっている。

2つめは新ルートの開拓。米中摩擦やウクライナ戦争による国際情勢の変化と、海底ケーブルは無縁ではいられない。地政学リスクの観点から新ルート開拓の動きが出てきた。

3つめが、プレイヤーの変化である。かつて主役であった通信事業者は影を薄め、2010年代からGAFAMが台頭。さらに今、新しいプレイヤーが参入しようとしている。

見逃せないのは、これらいずれの観点でも日本がキープレイヤーになり得ることだ。近い将来に稼働する大動脈に日本は深く関わっている。

ASEAN隆盛と中国回避の動き

太平洋は大容量ケーブル建設の中心エリアだ。2010年代以降、通信事業者とともにそれらを手掛けたのがGAFAM(図表1)。2016年に米日台をつなぐ設計容量60TbpsのFASTERが、2020年に日米とフィリピンをつなぐJUPITERが開通した。

図表1 2015年以降に敷設された(建設中を含む)主な太平洋横断ケーブル

図表1 2015年以降に敷設された(建設中を含む)主な太平洋横断ケーブル

GoogleとFacebook(当時)が出資して2022年に運用開始したPLCNは、120Tbpsの設計容量に加えて、米中摩擦により陸揚げ拠点が当初予定していた香港から台湾・フィリピンに変更されたことでも注目を浴びた。

太平洋横断ケーブルは従来、日本を経由するものが多かったが、技術進歩により、ASEAN諸国と米国を直接結ぶ長距離化が可能になった。この点で象徴的なのが、GoogleとMetaの「Echo」だ(2024年運用開始予定)。米からグアム経由でインドネシアとシンガポールに接続する。東・東南アジア海域では南シナ海、特に中国が権利を主張している九段線を避ける動きがあり、日本を経由しない新ルートが今後増える可能性がある。

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