量子インターネットの“要”に挑むスタートアップ「長距離量子通信に照準」

究極の安全性を持つ量子インターネットの要となる「量子中継器」。その実現に挑むのが横国大発スタートアップのLQUOMだ。量子中継の要素技術一式を揃え、世界に先駆けて長距離量子通信の実用化に挑む。

LQUOM 代表取締役CEOの新関和哉氏

LQUOM 代表取締役CEOの新関和哉氏

「当社が目指しているのは一貫して量子中継、つまり長距離量子通信だ。研究開発だけに留まらず、社会実装を見据えている」

そう語るのは、横浜国立大学で博士在籍中の2020年にLQUOM(ルクオム)を起業した代表取締役CEOの新関和哉氏だ。

同社は2022年に科学技術振興機構の大学発ベンチャー表彰「アーリーエッジ賞」を受賞。10月には、デジタル田園健康特区として健康・医療情報のデータバンク化に取り組む石川県加賀市と連携協定を締結するなど、量子通信の分野で期待を集めるスタートアップである。

量子通信の実用化を目指す企業の中でもLQUOMが異彩を放つのが「長距離通信」に的を絞っていること。すでに実用化されている量子暗号通信とは一線を画すアプローチで、量子インターネットの実用化を見据えている。

LQUOMが開発中の量子通信システム

LQUOMが開発中の量子通信システム

量子インターネットの可能性

長距離量子通信の実現に不可欠なのが、量子の状態を保ったまま情報を伝送する「量子中継」だ。

量子通信とは、「0」でも「1」でもある重ね合わせの状態のまま量子情報(量子ビット)を送受信し、量子デバイス(量子コンピュータや量子センサー)を接続する技術である。2030年代の実用化を目指して各国が技術開発にしのぎを削っている。

これが必要とされる理由は2つ。1つが通信セキュリティの強化、つまり量子暗号通信だ。量子情報はコピーが不可能で、盗聴された場合には即座に検知できる特性を持つため、絶対に安全な通信が確立できる。

もう1つ、複数の量子コンピュータをつなぎ合わせて計算力を増強する分散量子計算も可能になる。「今のPCも、1台だけではYouTubeもTwitterもできない。同様に、将来的には量子デバイスを結び付けることで新たなアプリケーションが次々に登場するだろう」(新関氏)

ただし、長距離通信には難点がある。量子状態はコピーできないため、現在の光伝送のように中継点で増幅することはできない。量子通信に特化した新たな中継器が必要だ。

この量子中継は「量子もつれ」を利用する。どれほど離れた場所でも量子情報を瞬時に共有できる特殊な現象を使って量子状態を転送する(量子テレポーテーション)。LQUOMの強みは、これに必要なコア技術群を持ち、かつ「つなぎ合わせる」ところにある。

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