NTT、APNを活用したE2E光映像配信アーキテクチャの基本機能を実証

NTTは2023年6月1日、IOWN時代のAPNを活用した次世代の映像配信に向けて、エンド・ツー・エンド光映像配信技術の基本機能を実証したと発表した。

近年、放送事業者やOTTサービス事業者による映像、番組制作では、クラウドサービスなどによるリモートプロダクションが広く利用されるようになっている。これにより、映像素材を集約して番組制作を進めることができ、従来のように全国各地の拠点で番組制作を行う場合と比較して、制作作業を効率化することができる。一方、映像データは4K、8Kと高精細化、大容量化が進んでおり、素材集約のためのネットワークコストや処理量の増加に伴うクラウドサービスコスト、そして一連のシステムの消費電力についても、さらなる増加が見込まれる。

NTTでは、映像処理を行うGPUなどのリソースを光電融合デバイスでチェイニング(複数のネットワークリソースや映像処理リソースを数珠つなぎに接続し、必要な処理を複数の処理装置にまたがって実行する方法)し、光伝送ネットワークと直接接続するエンド・ツー・エンド光映像配信アーキテクチャにより、このような課題の解決を目指している。

エンド・ツー・エンド光映像配信アーキテクチャは、APN上のCPU、GPU、メモリといったリソースを映像処理リソースとして利用する。これらのリソースは、光電融合デバイスによって相互に光波長で接続されており、映像FDN(IOWNが掲げるAPN上で、ICTユーザー体験の飛躍的な向上を目指し、柔軟かつダイナミックな制御を行う機能別専用ネットワーク)コントローラによって、必要な映像処理の規模や内容に応じ、リソースの割当やリソース間の接続を制御する。

エンド・ツー・エンド光映像配信アーキテクチャ

エンド・ツー・エンド光映像配信アーキテクチャ

映像処理リソースは、APNを構成する装置の1つで、波長の割当制御や集線を行うAPN装置(APN-G)と光パスで直接接続され、映像素材の入力から、プレイヤーまでの出力をエンド・ツー・エンドの光パスで結ばれる。これにより、映像データの通信やリソース間の接続を光通信化でき、従来の電気処理を介する映像配信システムと比較して、超低遅延、広帯域、低消費電力化を実現する。さらに、映像FDNコントローラがサービス事業者の番組編成システムなどと連携し、映像配信の要求に応じて、オンデマンドにネットワークリソースや映像処理リソースを提供する。

エンド・ツー・エンド光映像配信アーキテクチャの基本機能の要素技術としては、①ネットワーク内映像処理技術、②番組編成に応じた動的素材伝送パス切替技術がある。

①ネットワーク内映像処理技術は、APN上に配備された、プログラマブル光映像スイッチ内にあり、映像ブロック単位での処理により、ネットワーク上での映像加工、編集等を可能にする技術。同技術では、複数の映像素材に対し、編成情報やユーザーからのパーソナライズ要求を基に、ネットワーク上を流れる通信データを映像ブロックごとに書き換えなどを行う。このように、一般的なスイッチャーなどの映像用装置を用いずに、ネットワーク装置上で映像の切り替えや合成といった映像処理が実行でき、映像データを映像信号やファイル形式に変換せずに、そのまま映像処理が可能となり、低遅延の映像編集、配信機能を実現する。

ネットワーク内映像処理技術の概要

ネットワーク内映像処理技術の概要

②番組編成に応じた動的素材伝送パス切替技術は、サービス事業者からの編成情報を基に、必要な映像処理の内容と連携してオンデマンドにネットワークのパス/経路制御、リソース割り当てを行うことで、ネットワークリソースの利用を効率化する技術。同技術を用いて、多地点間の映像伝送、配信を動的に制御することで、様々な映像を低遅延かつシームレスにつなぐ映像配信を実現する。

動的素材伝送パス切替技術について、NHK放送技術研究所(以下、NHK技研)と共同で、リニア映像配信プラットフォームの基本機能に一部の成果を実装し、動作実証を行った。共同検証において、NTTの動的素材伝送パス切替技術の一部を実装した光パスネットワークと、NHK技研の動画配信基盤技術を組み合わせた検証環境を共同で構築し、リニア映像配信プラットフォームの基本機能の動作実証を実施した。

検証では、NTTの動的素材伝送パス切替機能により、放送事業者が作成した番組編成情報に基づいた光パスのオンデマンド予約を可能にしたことで、オンデマンドに光パスネットワークの開通、閉塞を制御し、大容量の高精細な映像素材の伝送において、効率的なネットワークの利用ができることが確認された。

また、NHK技研の動画配信基盤技術により、映像素材に対してフレーム精度によるシームレスな番組切り替え、視聴者の地域情報に応じた、配信する映像の切り替えや天気マークなどの上乗せスーパー機能を適用した配信を実証した。さらに、ネットワークと動画配信基盤技術の組み合わせにより、カメラからプレイヤーまでのエンド・ツー・エンドの配信を低遅延で実現できることを確認したという。

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