NRIが解説するIoTデータの可能性 「オルタナティブデータ」がビジネスを変える!

ビジネスの世界でこれまで伝統的に用いられてきた一般的な公開情報以外のデータ群を指す「オルタナティブデータ」。これを活用したビジネス変革が世界中で巻き起こっている。そこで主役級の活躍をしているのが、IoTデータだ。野村総合研究所は2023年3月31日に開催したNRIメディアフォーラムで、その最新動向を解説した。

オルタナティブデータとは、“別の”“代替の”データという意味だ。これまでは一般公開されていなかった、あるいは公開されているものの整理されておらず、活用に耐えなかったデータである。近年、投資の世界でこの活用がトレンド化しており、機関投資家が、財務情報や経済統計のような伝統的な公開情報に加えて、この新たなデータ群を投資判断に使っている。

ここで注目されるのが、「オルタナティブデータの中に、リアルタイム性の高いものが含まれる」ことだ。野村総合研究所(NRI)IT基盤技術戦略室 エキスパートリサーチャーの亀津敦氏は、「店舗のPOSデータや機械の稼働状況。また、実世界の実情を表すデータとしてIoT機器/センサー、航空機や人工衛星、船舶のデータがある。技術の進歩によって利用可能になった新しいデータが、投資家や企業のビジネスで使われるようになってきている」と説明した。

野村総合研究所(NRI)IT基盤技術戦略室 エキスパートリサーチャーの亀津敦氏

野村総合研究所(NRI)IT基盤技術戦略室 エキスパートリサーチャーの亀津敦氏

オルタナティブデータとして活用されるデータソースと、その活用例を整理したのが下の図表だ。実世界を対象としたものの大半は、企業・社会活動のデジタル化によって活用が可能になったものと言える。IoT機器や自動車、船舶、設備等がネットワークに接続され、「センサーデータが“継続した流れ”として観測されるようになったことが大きい」と亀津氏。また、コロナ禍によってリモートでのデータ取得が活発化したことも、その背景にあるという。

オルタナティブデータとして活用されるデータソース

オルタナティブデータとして活用されるデータソース

体温計のデータを薬局、そして政府も活用

このオルタナティブデータのビジネス活用例が次々と登場している。主戦場は米国だ。既存事業で収集したIoTデータ、あるいは“データプロバイダー”から購入したオルタナティブデータを活用して、新たなビジネスが生み出されている。

ヘルスケアの領域では、米国で200万台のスマート体温計を販売するKinsaが、そのデータから全米の発熱傾向を集計し、全米規模での感染症の流行予測を行っている。200万人の体温データを継続的に分析することで、街レベルでの発熱動向が追跡可能になり、これを大手ドラッグストアに販売。ドラッグストアは、衛生用品の仕入れタイミングの判断に用いたり、流行が高まりそうなエリアへマスクや薬の在庫を移動したりするのに活用している。

機器稼働ログを活用したKinsa Healthの事例

機器稼働ログを活用したKinsa Healthの事例

コロナ禍においては、ニューヨークのあるエリアで発熱傾向のピークの2週間後に死亡者のピークが発生することが判明。いち早く傾向を把握することで、「政府や自治体の感染症対策にも利用されている」(亀津氏)。新型コロナだけでなく、季節性インフルエンザや花粉症対策にもこのデータを用いているという。

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