SPECIAL TOPICデータセンターのための新たな節電法とは? DPUで電力使用量45%削減の試算結果

IT機器は電気がなければただの「箱」だ。エネルギー価格の値上がりを背景に電力価格の高騰が続く中、データセンター事業者は省電力化に向け知恵を絞っているが、決め手に欠ける状況だ。その打開策となりそうなのが、DPUを用いた処理のオフロードである。

負荷の高い処理をDPUにオフロードし性能向上と電力消費の効率化を両立

ITリソースの需要は高まる一方だが、電力代の高騰も続き、先が見えない。値上げも難しいとなると、データセンター事業者としては、コスト増を飲み込んで今までと同じ機材を使い続けるか、やむなく一部の機器の電源を落とし、性能を落としても運用コストの上昇を抑えるかの2つしかないと思いがちだ。

だが実は、新たな選択肢がある。データプロセシングユニット(DPU)やSmartNICを活用して電力使用効率を高め、性能を落とさず、消費電力の伸びも押さえていく方法だ。「GPUやDPUといった新たなコンポーネントを追加すると、消費電力の絶対値自体は増えるかもしれません。しかしサーバーのパフォーマンスを効率的に向上でき、全体として消費電力効率は高まります」と愛甲氏は述べる。

では、エヌビディアが提供する「NVIDIA BlueField DPU」とはどういったものだろうか。エヌビディア ソリューションアーキテクチャ&エンジニアリング部 シニアソリューションアーキテクトの大西宏之氏は「暗号化処理やVMware等の仮想化支援、正規表現によるマッチングといった負荷の高い処理を実行するハードウェア(ASIC)を複数搭載したユニットです」と端的に説明する。

コンピューティング処理の中でしばしば生じる高負荷な処理を、CPUではなく、DPUに搭載された専用ハードウェアエンジンで実行することで、電力消費を抑えながら効率的に行うことができる。いわゆる「オフロード」と呼ばれるもので、単に処理の高速化を実現するだけでなく、実は電力消費効率にも効果的だ。

「CPUは賢く汎用性が高いため、さまざまな処理をこなすことができますが、高速に処理しようとするとどうしても負荷が高まり、多くの電力を消費します。これに対しDPUは同じ処理を、専用ハードウェアでスマートに、効率よく実行します。DPUを追加した分、消費電力は少し増えるかもしれませんが、CPUが頑張らなくてすむためトータルでの消費電力は大きく削減できます」(愛甲氏)

IPsec処理をDPUにオフロードすることで、ピーク時の消費電力を21%、34%も削減できる

IPsec処理をDPUにオフロードすることで、ピーク時の消費電力を21%、34%も削減できる(画像クリックで拡大)

エヌビディアでは、さまざまなシチュエーションでDPUの電力使用効率化の効果を検証している。

たとえば、IPsecで通信を暗号化する際の電力消費を比較すると、CPU使用時に比べ、DPU使用時はサーバー1台当たり140W、21%の省電力が実現でき、クライアントでは247W、34%も削減できた。またOpen vSwitch(OVS)ネットワーク処理をDPUでオフロードすると、CPUで処理した場合に比べ、消費電力を127W、29%削減できるという効果が得られている。VMware vSphere ESXiを実行し、その上でRedisを実行する検証では、ネットワーキング処理をDPUにオフロードすることで、パフォーマンスを改善しながら12個のCPUコアを節約でき、トータルでサーバー台数を、ひいてはTCOを削減できる結果が得られた。

OVSのオフロードでも、サーバー負荷のピーク時に消費電力を29%削減できる結果が得られた

OVSのオフロードでも、サーバー負荷のピーク時に消費電力を29%削減できる結果が得られた(画像クリックで拡大)

このように同じ処理を実行するにしても、特に負荷が高ければ高いほど、DPUにオフロードした方が電力消費効率は向上し、結果的にサーバー1台当たりの消費電力が減る。これをデータセンター全体に適用していくことで、サーバーの総数も削減でき、電力はもちろん空調をはじめとする設備投資も減らせることから、TCOはさらに削減できる。現に今回の試算では、IPSecをDPUにオフロードすることで、3年間の電力使用量をトータルで45.8%削減できるといった大きな効果が見込まれている。

しかもエヌビディアのBlueField DPUは、搭載した複数のアクセラレーターを適材適所で使い分けることができるほか、SDKの「NVIDIA DOCA」やさまざまなパートナーが参加するエコシステムを生かし、将来的な互換性を確保しながら活用できる特徴を備えている。

機器を節約・停止して節電するのではなく性能を高めながらTCO削減を図るアプローチへ

「ちりも積もれば山となる」と言われるが、データセンターの消費電力にはまさにそれが当てはまる。今回の視線で示された45%とまではいかなくとも、10%程度でもコスト削減効果は絶大なはずだ。

「今回の試算では、1万台のサーバーを3年間運用する想定でさまざまなコストを試算しましたが、それでも3年間で5600万ドルを超えるTCO削減効果が見込まれます。それを越える規模の事業者やハイパースケーラーのように、より大規模なデータセンターになればなるほど電力使用率の効率化によるコスト効果はさらに高まるでしょう」(大西氏)。しかも、ランニングコストは下げれば下げるだけ利益につながるため、ビジネスに非常に大きな効果をもたらすはずだ。

残念ながら国内では、電気代高騰を背景に、大学・研究機関がスーパーコンピューターの稼働を一時停止する事態まで報じられている。このケースが示すとおり「コスト削減のためには節約して節電を」という思考に陥りがちだ。

しかしすべての処理をCPUに頼る形から脱却し、電力効率を高めるDPUを追加して処理をオフロードすることで、電力消費効率と性能のどちらも手に入れることができる。これからの電力高騰時代を乗り切る1つのポイントになるのではないだろうか。

エヌビディアのホワイトペーパーはこちら⇒
「データセンターの電気代は「NVIDIA DPU」でこんなに削減できる」

<お問い合わせ先>
エヌビディア合同会社
お問い合わせ窓口:https://nvj-inquiry.jp/

 

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