<特集>デジタル田園都市国家構想「地域事業者にノウハウ移植を」野村総合研究所 毛利一貴氏

全国各地でデジタル施策の実装に取り組む野村総合研究所(NRI)。施策の成功のポイントは、地域の事業者を巻き込んだ体制を構築したうえで、民意を反映したサービスを提供することだという。

デジタル田園都市国家構想に取り組む自治体のうち、これまで地方創生に注力してきたところは、すでに解くべき課題やビジョンを明確化できているだろう。一方で、ICT利活用の文脈で取り組んできた自治体は、ICTツールありきでトライし、ビジョンを後付けで掲げることもあると考えられる。

本質的には、政策企画系の部署が日々地域の課題に向き合う中で、それを解決するためにどういったツールを使うべきなのかを考えていくのがあるべき姿であろう。デジタル施策やツールのリストを見ているだけでは、地域課題に気付くことはできない。

デジタル施策の成功には、住民の民意が反映されたサービスになっているかどうかが1つめに重要な点だ。民意は地域の課題に紐付いている。もう1つ重要なのは体制の構築だ。特に、地域にゆかりのある事業者を巻き込んだ体制の組成が必要である。

反対に言えば、地域と関係を持っていない事業者と実証事業に取り組んだとして、初年度は国の補助金が収入源になるが、2、3年目は収益が見込めないために継続できないことも多い。取り組み開始1、2年の間に、地域の事業者に主体を移すための人材育成や研修などを行うべきだ。

自治体の体制も重要だ。前向きな首長の任期中は現場が動いても、替わった途端に機動力を失うこともある。トップダウンで実行するのであれば、首長の在任中に1次請けになるであろう部署が、しっかりと現場を動かしていくようなマネジメントサイクルを描けていないと継続は難しい。

国が行う提案公募には、行政を中心としたコンソーシアムを組んで応募することが多い。地域で一丸となって取り組むために官民連携することは当然だが、持続可能性の観点からは収益を上げていかなければいけない。民間事業者を巻き込み、経営ノウハウを取り込むことが必要だ。

有力企業の立地していない小規模の自治体がどうコンソーシアムを形成するかは難しい問題だ。単一自治体では困難な場合、複数自治体が圏域として一体として取り組むことが解の1つになる。

また、まったく異なる場所の自治体に同様の課題が存在するときに、自治体から自治体へソリューションを提供するモデルも徐々に現れている。群馬県前橋市が北海道江別市に「めぶくID」を提供しているのが一例だ。

野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 チーフコンサルタント 毛利一貴氏

野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 チーフコンサルタント 毛利一貴氏

地域連携の好事例

NRIが関わる事例に北海道上士幌町がある。ICT利活用の文脈で様々な挑戦を行う中、高い意識を持って住民や地域事業者を巻き込んできた。住民がタブレットで予約できるデマンド型バスを地元の交通事業者が運行している。人口減少、高齢化という状況下でいかにして企業として存続できるかという問題意識を自治体が焚きつけながら推進している。

また、高齢者にタブレット端末を配布するに留まらず、デジタルトランスフォーメーション推進員という職員を行政が雇用し、使い方を指導するなど普及啓発を行っている。こうした住民への浸透を国の補助事業として初年度に行うことは有効な方法だ。

住民へのリーチには、地域の事業者が持つ既存のタッチポイントが活用できる。長野県伊那市、鳥取県米子市などはケーブルテレビ事業者のネットワークを有効に利用している。現実的には、施策初期に必要な都市OSなどの基盤構築は国の補助金を用いて東京の事業者に依頼することが多いが、早い段階で地域の事業者にノウハウを移植し運用していく方法を考えるべきだろう。

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