「衛星IoTは盛り上がっている」アップルが緊急SOSに採用したグローバルスターの国内戦略

iPhoneの衛星通信を活用した「緊急SOS」機能で一気に名を広めた衛星通信事業者のGlobalstar。日本国内では、海洋を中心に法人向け衛星IoTサービスに力を入れている。

2022年9月に発表されたiPhoneの最新モデル「iPhone14/14Pro」では、ある新機能が話題になった。携帯電話やWi-Fiの電波が届かないところでも、緊急通報をテキストメッセージで発信できる「緊急SOS」機能である。

最近、イーロン・マスク氏がCEOを務めるスペースX社の「Starlink」などの衛星ブロードバンドサービスへの注目が高まっているが、Starlinkの場合、現状は専用アンテナを設置する必要がある。一方、iPhoneの緊急SOSでは、スマートフォンと衛星の直接通信が一足先に実現されている。

低軌道衛星で人命救助

アップルが緊急SOSを提供するために手を組んだのがGlobalstar(以下、グローバルスター)社である。「実はSOSサービス自体は2007年から提供しており、9000件超のレスキュー中継を果たしてきた実績がある」とGlobalstar Japan取締役CMOの小林盛人氏は話す。

Globalstar Japan 代表取締役社長 安藤浩氏(中央)、同 執行役員 CTO 菱倉仁氏(左)、同 取締役 CMO 小林盛人氏(右)

Globalstar Japan 代表取締役社長 安藤浩氏(中央)、
同 執行役員 CTO 菱倉仁氏(左)、同 取締役 CMO 小林盛人氏(右)

同社は地上約1440kmの高度に32機の低軌道衛星(LEO)を打ち上げ、独自の衛星コンステレーションを構築している。現在、地表の85%をカバーしており、122カ国で利用可能。日本も国内全土がカバーエリア内だ。

グローバルスターの衛星コンステレーションは、ベント・パイプ方式を採用している(図表)。地上局から衛星に送信した信号を、衛星コンステレーションがそのまま端末へ折り返すシンプルな方式だ。「ナローバンドではあるが、IoTのデータ送信に特化して安価にサービスを提供できるのが特徴だ」とGlobalstar Japan執行役員CTOの菱倉仁氏は解説する。

図表 Globalstarの仕組み

図表 Globalstarの仕組み

同社の衛星IoTサービスで主に扱っているデータは位置情報である。ユーザー目線では位置情報データを送信するための通信手段としてはモバイル網やLPWAなども選べる。モバイル網と比べると低消費電力性とエリアカバー、LPWAと比べてもエリアカバーで勝る点が強みとなっているという。「目安としては、位置情報の送信だけであれば、GPS情報とテキストメッセージを1時間に1回送信するとして2カ月ほどは充電不要でソリューションが利用可能だ」(小林氏)

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