ネットワーク全体で消費電力を最適化
今後、LSI技術の進化、処理エンジンの高速化による部品の集約など、省エネ化に向けた各ベンダーの競争は激しくなっていく。アラクサラの場合、これまでも新モデルが登場する度に従来比20~30%の効率改善を実現してきたという。「04年の設立時から技術開発に取り組んできた。他社が簡単に真似できない積み重ねがある」と倉本氏は自負する。
だが、そうした技術の追求にも限界はある。LSIのレベルではすでに改善率に鈍化傾向が見られるという。また他社も軒並み、従来比の改善効果を打ち出してきている現状では、差別化は難しくなる一方だ。
そこでアラクサラが取り組んだのが、「ダイナミック省電力システム」だ。最近流行の未使用ポートやモジュール単位での電源オフはもちろん、設備の稼動状況に合わせて深夜・休日のネットワークを部分稼動とすることで、ネットワーク全体の省電力化を実現しようというものである。フロアスイッチからバックボーンスイッチまで幅広いラインナップを揃える同社ならではの取り組みと言えよう。
その適用イメージが図表3だ。大学を例にしているのは、深夜・休日の教室は完全未使用、研究室は常時稼動というように、場所によって稼動状態が異なり、効果がわかりやすいためだ。実際に、大学・研究機関からの引き合いが多いという。
図表3 ダイナミック省電力システムの適用イメージ(大学の例) |
将来はキャリア向けにも
ポイントは、スケジュールに合わせて複数の省電力機能を使い分ける点にある。フロアレベルでは、深夜・休日の教室は完全スリープ状態とし、事務室・研究室は勤務(残業)状況に合わせてポート単位で電力をカット。バックボーンスイッチは、日中に比べてトラフィックが激減する時間帯に省電力モードで稼動(ASICのクロックダウン)して性能を抑止したり、待機系をコールドスタンバイ状態にする。PC等では当たり前のスリープやスタンバイ機能を、「常時フル稼働」が常識のネットワークの世界に持ち込んだ。本格展開はこれからだが、顧客からは「ムダが減るのならば、夜は待機系への切り替えに多少の時間がかかってもいい」といった反応も得ているという。
鍵となるのは運用の簡素化だ。アラクサラでは、多数の機器を一元的にスケジュール管理できるGUIツールをリリース予定だ。「運用まで含め、実用化レベルでネットワーク全体の省電力化を提案できるのはアラクサラだけ」と倉本氏は力を込める。
また、さらなる高みを目指し、トラフィックに合わせてネットワーク機器が自動的に処理能力や回線速度を変動させる新技術の開発も進めている。ターゲットは通信事業者のサービスルーターだ。各事業者がクラウドサービスに注力する今後、トラフィックの激増と、それに伴う消費電力の増大は悩みの種となり得る。アラクサラは新技術で、キャリア向けビジネスにおいても「エコ」を強力な武器にしたい考えだ。