世界の企業の中で最もクラウド/SaaSに関心が高いのは日本企業――。
これは、IBMが調査した結果だ。同社は世界78カ国で2500人を超えるCIO(日本では162人にインタビュー)に「競争力強化のためにどのような分野の取り組みを検討しているか」という質問を行ったが、「クラウドコンピューティング/SaaS」と回答したCIOの比率は世界全体で33%。対して日本は50%だった。日本企業はグローバル平均と比べてクラウドに対する関心が高いのだ。
図表1 世界と比べてクラウド/SaaSへの関心が高い日本企業 |
それに対応する形で、日本IBMは全社横断でクラウドを推進する組織「クラウド・コンピューティング事業」を2010年1月1日付で設置した。その責任者である吉崎敏文執行役員は「日本市場は9月あたりから大きく変わってきた。勉強モードから現実にクラウドコンピューティングを進めようとしている日本企業が多くなってきたことを実感している」と話す。
実際、同社のクラウド関連商談も現実のものとなっている。IBMが公開しているクラウド事例は公開されたもので55件。日本の事例として、三菱東京UFJ銀行、豊田通商、JVC・ケンウッド・ホールディングス、九州大学、工学院大学、早稲田大学など15件が明らかにされている。
他社も同様だ。「09年4月の段階のクラウド商談の60%を『検討中』が占めていたが、12月現在は『検討中』の企業は10%」。富士通の阿部孝明サービスビジネス本部長はこう語る。これは、クラウドに関する企業の期待が減少したということではない。企業は、「クラウドは何に使えるのか」を検討する段階から、サーバー集約によるコスト削減やIT基盤の標準化、ディザスタリカバリ対策など、クラウド利用の目的を明確し、現実の採用へと歩を進めている段階に入っているというのだ。
NTTデータも「クラウドコンピューティング事業を3年後に1000億円のビジネスにしたい」(山田伸一代表取締役常務執行役)と意気軒昂だ。さらに、NIer大手のネットワンシステムズは、クラウド関連事業のプラットフォーム製品(サーバーやストレージ)の売上が好調で、09年度は110億円を見込んでいる。NECは、2010年1月にサーバーやストレージ、ネットワークを統合して企業の迅速なクラウド基盤構築を可能にするパッケージ製品「Cloud Platform Suite」を発表した。同製品の販売を担う保坂岳深企業ネットワークソリューション事業本部長は、「1年間で100億円の売上を見込んでいる」と意気込む。
クラウドビジネスに取り組むSIer/NIer各社は早くも手応えを表明する。とはいえ、クラウドビジネスは立ち上がったばかり。クラウド市場がどれほどのスピードで拡大するのかは、SIer/NIer各社がクラウド時代に合致するビジネスモデルを構築できるかどうかにかかっている。