ネットワークの自動化に取り組む企業が徐々に増えている。

サーバーインフラ等の自動化が大きく進展するのを横目に、ネットワークにおいても従来から人手不足を背景に、構築や運用などの作業を自動化したいというニーズは根強かった。さらに近年はコロナ禍やクラウドシフトを背景に、インフラとしてのネットワークの重要性が高まり、より迅速な構築・設定変更が求められるようになっている。

その一方、クラウド活用により接続先が増加し、在宅勤務などの広がりによりアクセス元やデバイスの種類も分散し、構築・運用の負荷は高まっている。

加えて、ネットワーク担当者自体のリモートワーク化も進み、現地作業のハードルが上がっていることから、自動化のニーズはより一層高まっている。

「コロナ禍で、リモートからでもネットワークを管理できる仕組みを整えることが急務になった。また、アプリケーションが従来のデータセンターからインターネットを通じて様々な場所に分散するようになり、ネットワークが複雑化している。ネットワークの安定性・耐障害性が強く求められるようになっているが、こうした課題を解決できる技術力の高いエンジニアは依然として不足しており、そうした人材に頼らずに運用を効率化できる方法を模索している企業が増加している」とIDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャーの草野賢一氏は分析する。

手軽なクラウド型を

ただ、ネットワークの自動化、省人化の取り組みはIT部門にとっては難易度が高く、後回しにされやすい領域であった。

というのも、ネットワークはアクセスポイントやルーター、スイッチなどの専用機器や専用ソフトウェアで構成されている。ベンダーや機器ごとに操作や設定方法が異なるため、それぞれの専門分野に知見を持ったエンジニアが必要で、作業が属人化しやすかったからだ。

「ネットワーク機器がそれぞれ独立しているため、操作のノウハウやトラブルのナレッジがどうしてもエンジニアに依存していた。そういった中で自動化を行おうとすると、設定の仕方が異なり、1つのコードに落とし込むのが難しい。結果、シェルスクリプトやマクロなど手打ち作業と実質変わらない程度の自動化しか行えなかった」とネットワンシステムズ ビジネス開発
本部 第1応用技術部ネットワークチームの由原亮太氏は述べる。

そこで、手軽に構築・運用の負荷を下げる手段として、「クラウド管理型無線LANやネットワークの可視化ツールなど、手を付けやすいソリューションの採用が増えている」と草野氏は話す。

多数の企業向け無線LANアクセスポイントを効率的に管理するためには、SSIDや周波数チャネルなどの設定を一元管理できるコントローラー（WLC）が必要となる。

WLCがオンプレミスにある場合、拠点のネットワークに障害などが発生すると、ネットワーク担当者が拠点を直接訪れ、対応する必要がある。

対して「Cisco Meraki」や「HPE Aruba Central」などのクラウド管理型は、その名前の通りクラウドから管理が可能だ。障害時なども現地に行かず、Webポータルからネットワークの状況把握や機器の設定変更などができる。

「企業ネットワークの場合、処理能力が高いオンプレミス型を採用しているケースも多いが、そういった企業でも新しい店舗などではクラウド管理型を利用するケースも出てきた」と草野氏は語る。

Cisco Merakiの管理画面のサンプル。シンプルな画面で簡単な操作が可能なことをコンセプトにしている

複雑なネットワーク環境において、トラフィックの異常やセキュリティ対策の観点から不審な振る舞いをする端末や通信がないかを検知するネットワーク可視化ツールも充実している。

可視化の手法としては、ネットワーク機器を監視・制御するためのプロトコルであるSNMP（Simple Network Management Protocol）を用いるものと、パケットキャプチャによって行うものの2つが一般的だ。いずれの手法でも端末にエージェントの導入が不要で、GUIツールからネットワークの使用状況や、障害情報などの監視項目をグラフで確認できるようになっている。

また近年、クラウド管理型無線LANでも、アクセスポイントに繋がっている端末や無線環境、各ユーザーがアクセスしているアプリケーションなどの項目をダッシュボードから可視化できるようになっている。