携帯インフラ市場で進むグローバルコンペティション外資4強 日本を攻略(前編)――携帯インフラ市場のグローバルトレンド

LTE・スマートフォン時代への突入で、“特殊”だった日本のインフラ市場にも、端末市場と同様の変化が訪れるかもしれない。日本市場を狙う外資系ネットワークベンダーの戦略を読み解く。

LTEの到来が間近に迫り、モバイルネットワークの高速化・高度化への期待が高まりを見せているが、通信事業者の次世代ネットワークを陰で支えているのがネットワークベンダーだ。彼らの技術的な貢献度は極めて高いといえる。本稿では、外資系ネットワークベンダーが展開するグローバル戦略/対日戦略にスポットを当て、今後の通信業界で彼らが担うべき新たな役割・使命を明らかにする。

まずは、外資系ベンダーの中でも伝統的なプレイヤーであるエリクソン、ノキア シーメンス ネットワークス(以下、NSN)、アルカテル・ルーセント等の中長期戦略に大きな影響を与えている通信インフラ市場の動向をグローバル視点で捉えることとしたい。以下に示す4つの特徴が、彼らの戦い方を規定しているといえる。

(1)顧客の視点: 通信事業者の収益性の低迷

特に欧州地域において、通信事業者の収益性は低迷・悪化の一途を辿っている。主たる原因は通信事業者間における価格競争の激化に伴うARPU(Average Rate Per User:ユーザー1人当たりの月間平均通信料収入)の下落である。

1人当たりの名目GDPが日本と同水準のドイツにおける携帯電話のARPUは3000円台にまで落ち込んでいる。2010年3月期におけるNTTドコモの実績が5350円であることを勘案すると、ドイツの水準がいかに悲観的・致命的なものであるかがうかがえる。

故に、通信事業者各社における設備投資、オペレーションコストの最適化・最小化は、事業運営上の最優先課題であり、ネットワークベンダーに対する低価格圧力は相当なものとなっている。

(2)隣接プレイヤーの視点: ITプレイヤーの台頭

近年、通信事業者の設備投資に占めるIT領域の割合が上昇傾向にある。IBM、HP、オラクルといったIT業界の“強者”は、ネットワークベンダーが提供するサービス・機器の中でも上位レイヤに位置するSDP(Service Delivery Platform)/IMS(IP Multimedia Subsystem)や、顧客サービス等のバックオフィス業務を効率的に推進するソリューションを通信事業者に対して積極果敢に売り込んでおり、従来からの主力事業である下位レイヤへの投資がその割を食う形となってしまっている。

月刊テレコミュニケーション2010年12月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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松岡良和(まつおか・よしかず)

世界で最初に設立された経営コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンで、TIME(Telecommuni-cation/Information Techno-logy/Media/Electronics)プラクティスの日本代表を務める。専門領域は、同分野に対する事業戦略立案、新規事業開発、組織・人事制度改革等。国内最大手システムインテグレーター、会計事務所系コンサルティングファーム、欧州最大手IT・戦略ファームを経て、アーサー・ D・リトルに参画

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